演出家、脚本家
はじめまして。演劇に普段は浸かりながら、小説もちょびちょびと書いています。
山形の片田舎に暮らす澤井穂花(さわいほのか)は高校二年生、祖母と二人で暮らしていた。高一の春休みも終わりに差し掛かる頃、出かけた駅前で穂花はある女性とぶつかってしまう。緊張しいで緘黙症の穂花は親しい人の前でしか声を出せない。だからその女性に謝ることも出来ず立ち尽くし、ついには怒りを向けられてしまった。しかしその女性は、東京からやって来た穂花の新しい担任だった。 穂花の親友・理子(りこ)は、その女性「水田レナ」についての情報を穂花に話す。それによると、先生は一度上京し東京の大学を出たものの、またこの山形へ何故か戻ってきたらしかった…。 孤高のレナと、「くちなしの子」穂花。その二人が「短歌」を通して繋がり合う時、それぞれは、それぞれの壁を乗り越えてゆく。
「彼」と「彼女」は、淡路町の片隅にある古くて安い木造アパートで暮らしていた。 野良猫の撮影をする、フリーの写真家である「彼」と、東京駅の書店で派遣として働く「彼女」。二人の出会いは五年前に遡る。東京のど真ん中で質素で何気ない日々を送りながら、年を重ねて、三十手前。周りは当たり前のように結婚していく中で、不思議な同棲を続けていた。恋人のようで、そうではない。だからといって友達ではない。そして全く冷え切っている訳でもない。そんな二人も自分の将来について考え始めるが、その考えを交わすことは無かった。二人は互いに干渉しないようにしながら、それぞれの道を探っていく。これがいつしか当たり前になっていた。 しかし、それぞれに転機が訪れる時、彼らの関係性は揺らぐこととなるー。
東京に住む高校生「ひより」は、幼い頃から従姉妹で同い年の「琴子」と共に暮らしていた。 それは、12年前のあの日から。 同じ屋根の下で過ごしながらも近くて遠い二人の関係は、ある時部活で参加することになったコンサートで紐解かれるように変わり始める。
横浜、海の街。 昼間は哲学科の女子大生、夜はヘルス嬢として生きる「美波」は、足りない何かを求めて肌を交わしていた。 そして客として出会った年上の院生「浩」。 しかし彼は身体中に染みが広がる難病に罹り、床の上で最期の時を待っていたー。 誰かに求められること、必要とされることを欲して翳りのある生を費やす2人。 天国の向こう側には、何があるのか。 やがて、静かに心も交わして。