ぶれいくふぁすと

以前アップした『歳月』という作品を大幅に加筆修正したものです(2025年12月10日)。

膨らんだお腹に外から触れる
ごみ袋の話だとすぐに付け加える
そこには動く物が一つもない
その事実に 心から安心する



(いやいやな帽子)



階段を下りていくと言うから
エレベーターを待とうと提案する
身重でもあるまいし と漏らすから
逆光に沈んだ別棟を眺め



(ぴこぴこ鳴るスニーカー)



閑散としたロビーを歩いて
かさかさ鳴らす 二人して
順番に自動ドアの前に立つ
その鈍い反応に殺したのは欠伸



(ぶーぶーするクルマ)



山積みになった景色の裾野に
ひと袋 ひと袋と置いていく
突然 背後から挨拶の声をかけられても
何ひとつ落とさず 壊さず



(ぱちぱちする真似)



それで することはなくなった
痛々しい感じでサイレンは近付き
やがて無事に遠ざかっていく
ドップラー効果には誰も触れない



(ばいばいばい)



集積所はあけっぴろげ
ゴム製品は全て焼ける
隠れる意味も 何もない
股下から伸びる足と足



(かけこっこ)



どちらも思った事 考えていた事
真っ赤な顔をして
叩いた卵はきっと割れる
菜箸の長さも尋常じゃないから



(泡立つてとて)



引いた油がじゅっと鳴る
蓋をしないで じっとする
泳ぐのは丸くて固い目玉
誰ものでも何でもない 



から から
から から



割れた頭で夢になろう

ぶれいくふぁすと

ぶれいくふぁすと

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-10

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