予期せぬ出来事 01
父と娘の会話
ボクの勤めていた会社は王子にある。
高崎線を使って赤羽駅まで出て、そこから京浜東北線に乗り換えて王子駅まで行っていた。
毎朝同じ電車で、7時過ぎに王子駅に到着し、中央口改札へ向かってホームを移動する。
本来なら上り口改札(南口)の方が会社に近いのだが、足腰を老化させないために中央口を使っているのだ。
その中央口階段の近くに、小学校3・4年生くらいの女の子とスーツ姿のお父さんが上り電車を待っている。
電車が来るまでのあいだ、その父娘は向かい合って話をしている。
女の子は、お父さんに向かって手を動かしながら、声を出さずに笑っている。
お父さんも楽しそうに、声を出さずに手を動かしている。
親娘の横を通って、ボクは中央口階段を下りる。
しかし、ちょっと前からその親娘を見かけなくなった。
「どうしちゃったんだろう……?」
何故だか分かった。
「そうか、夏休みだ!」
もうすぐ夏休みが終わる。
ボクは、夏休みが終わるのを楽しみにしている。
おしまい
予期せぬ出来事 01