予期せぬ出来事 01

父と娘の会話

 ボクの勤めていた会社は王子にある。
 高崎線を使って赤羽駅まで出て、そこから京浜東北線に乗り換えて王子駅まで行っていた。
 毎朝同じ電車で、7時過ぎに王子駅に到着し、中央口改札へ向かってホームを移動する。
 本来なら上り口改札(南口)の方が会社に近いのだが、足腰を老化させないために中央口を使っているのだ。
 その中央口階段の近くに、小学校3・4年生くらいの女の子とスーツ姿のお父さんが上り電車を待っている。
 電車が来るまでのあいだ、その父娘は向かい合って話をしている。
 女の子は、お父さんに向かって手を動かしながら、声を出さずに笑っている。
 お父さんも楽しそうに、声を出さずに手を動かしている。
 親娘の横を通って、ボクは中央口階段を下りる。
 しかし、ちょっと前からその親娘を見かけなくなった。
「どうしちゃったんだろう……?」
 何故だか分かった。
「そうか、夏休みだ!」
 もうすぐ夏休みが終わる。
 ボクは、夏休みが終わるのを楽しみにしている。

 おしまい

予期せぬ出来事 01

予期せぬ出来事 01

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted