彼女の記憶 #2
「今日の日帰り海水浴、楽しかった人~!」
こんがりと日に焼けた日菜子のお父さんが、右手を上げながらそう叫ぶ。
「はぁ~い!」
百合が笑顔で手を上げる。
「はぁーい!」
日菜子が同様に右手を上げる。
「……ありがとうございました、佐々木さん。食材費とか全部支払ってもらって」
僕はそう言った。
「おいおい、剣! ノリ悪ぃなぁ!? ここは素直に日菜子たちみたいに手を上げろよ!」
「まっ、その真面目さがお前のいいとこなんだけどな!」日菜子のお父さんはそう言いながら、少し砂を着いた右手でガシガシと僕の頭を撫でる。苦笑いするしかない。
もう日も沈む寸前だ。昼に頭上に煌々と輝いていた。太陽も、今は鳴りを潜めて美しい夕暮れに光っている。
「じゃっ、百合、剣! 明日から勉強も頑張りつつ、この夏を百二十パーセント……いや、二百パーセント楽しめよ? 高二の夏ほど楽しいものなんて、人生で二度とないんだからな!」
「じゃ、二人とも、またね~!」
日菜子のお父さんは鷹揚に笑いながら、日菜子と共に自分の車のほうへ歩いていった。
「……じゃあ、剣くん、私もまたね! また時間開いたらまた遊ぼ!」
「ああ」
百合も元気に手を振りながら小走りで自身の両親たちのほうへと向かって行った。
「今日も、もう日暮れか……」
僕は太陽を背に右手を口元に近づけながら大きく欠伸をした。
「……ねむ」
彼女の記憶 #2