雑記帳・11月

思い出を語る狭庭の秋明菊


小さな庭には花の咲く木が、いろいろとあった
モッコウバラ、サザンカ、キョウチクトウ、ノウゼンカツラ、ロウバイ、ハナミズキ、フジ、フヨウなど
下草にはシュウメイギク、ツワブキ・シャガ・クリスマスローズなど
知り合いの人の家を訪れた日には秋明菊の白い花が三つほど咲いていて、それが綺麗に見えた
真っ白な花は綺麗だけれども、どこかしら寂しさを漂わせている感じがした
少し寒くなってきた季節感も影響しているのかもしれない



ペダル踏む子らの声聞く冬の朝


街路の仕事をしていると自転車に乗った沢山の中学生が通り過ぎた
ヘルメットを皆な被っている、元気な少年や少女たちだった
挨拶をしてゆく子もかなりいた
太って体格のいい男の子もいれば、小さな女の子もいた
はにかんだ顔をしながら挨拶をしてゆく、かわいい女の子もいた
未来はこの子たちのもの、素直にそんな思いがした



群れ雀色付く木々の枝先に


沢山の雀が葉の黄色くなった榎の枝先に止まっては、しきりに鳴いていた
飛び立つ姿を見ていると二、三百羽はいたように見えた
田んぼが近くにあって餌になる稲の実が沢山落ちているので、それもあるのだろうと思った
久し振りに賑やかな雀の鳴き声を聞く事ができたと思った



かたかたと鶲鳴く声朝の窓


朝起きて二階の窓を開けると、かたかた・・と鳴き声が聞こえた
柿の木に止まっているジョウビタキの鳴き声だった
冬になったのだなと思った
鶲は近づいても逃げない事も多い



茫漠と芒の繁る空家かな


遠い昔、時々顔を合わせた人の家が空家になっていて、道路から見ると芒が一面に繁っていた
その芒の白い穂が塀の上に沢山あるのが見えた
一瞬、無常感というのか、時の流れを思ったりもした



北風にイチョウ散るなりはらはらと


イチョウの黄色い葉が風に吹かれて散ってゆく
透き通るような感じのするイチョウの葉が落ちてゆく眺めに、冬の訪れを感じた




ユリノキの枯葉拾ひし重さなく



仏膳のお茶を入れたる冬の朝



霧深くヘッドライトを付けてをり



夕陽さすアメリカフウの紅葉美し



見上げたる風なき夜の冬の星



一時の落葉を寄せし風の渦



ただ車のみ走りゆく冬の街



寅吉はすぐに戻りし冬散歩



レンガ切って赤く漂う冬の塵



ユリノキの大きな落葉拾ひけり



作業着のまゝ弁当を買う冬の店



ほつほつと赤き小さなソヨゴの実



実南天他には植木あらざる庭



レットイットビー別れし冬の道に聴く



松手入れぱちりぱちりと鋏音



老夫婦話合わざる冬の家



道の端に小菊のありし旧街道

雑記帳・11月

雑記帳・11月

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2025-11-06

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