はきだめ

10/13

人のいない場所でインターネットから離れて本を読んだりこうやってテキトーなことを書いたりしていたい、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホンを付けて周りにそこまで気を遣わず済むような空間だったらそれでもいい。でもバスは駄目だった。不自由な箱に閉じ込められて永遠と運ばれてるあの感じが好きで、その間ずっと本を読んでいるだなんて勿体無くて出来なかったから。
最近は身の回りのすべてに忙殺されていて本を読めるだけの余裕もなかったけど、ようやく少しだけ読むことができるようになったのでずっと鞄の中に入れていた金原ひとみのアンソーシャルディスタンスを職場の往復とか空いた時間に目を通している。どこを何回読んでもすべてが最悪で嬉しい、新刊のエッセイも読みたいけれどサイン会に落ちて買うタイミングを見失っている、40人の枠を当てる気満々だった自分の傲慢さが浅ましい。

10/17

明日がゴミの日じゃなくて部屋がもう少し綺麗だったらな、と思いながら恋人と別れた。犬が好きな人だったから江國香織のふりむくの文を思い出したりなんかして、久しぶりに読み返したくなって開いたけど結局そのページを読んだら満足して棚に戻した。

「さようなら。私はもうあなたのものではありません。たぶんもともとあなたのものではなかったのです。行かなくてはなりません。これはつけたままでいいですか。赤は好きな色ですし、似合うとも思っていて。
さようなら。もうお目にかかりません。でもすこしだけ、誰かのものになれてうれしかった。」

10代の頃に撮ってすごく気に入ってた雨の日に撮った傘の写真があって、それをいつかのタイミングで消してしまってから大切なものは自分の許せる形でいいからどこかに収めておかないといけないのかもしれないと思ってTwitterのアカウントみたいに簡単に消さないよう頑張って残していたInstagramのアカウントを消した。自分の投稿が視界に入る度、本棚みたいで嫌で仕方なかったから。でもそれすらまっさらにしてしまったら何もない人間なのを目に映る形で示してしまっているようで悲しくて、私にだって大切なものや文化があって血の通った人間なんだって顔をしていたかった。けど私にはもう誰も、何も要りません。だから空っぽでも許して

10/18

なんとなく欲しかった服がオンラインで完売していて、店舗の在庫を見たら別に近くもないけれど遠いとも言えない距離にある店舗に僅かに残っているみたいだったので辺境の地まで服を買いに来たのに「あ〜その服は5分ぐらい前に売れちゃいましたね」と店員に言われ特に悲しむこともなく、まあ5,000円浮いたと思えばいいかと50分近くかけて来たショッピングモールを10分足らずで後にした。その代わりではないけれど本屋で金原ひとみの踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君を買った。タイトルからすごく良くて悔しい、自分もこういう言葉を書いて一生呪ってやりたいと思う、悔しい、悔しい、悔しい 呪いは愛だけど愛は呪いじゃない

10/20

自分の言葉も文章も本当に届いてほしかった人には何も伝えられなくて前以上に行き場も意味も価値も無くなってしまったけれど、それでも顔も名前も身体も無くたって私が私であるという記号の役目だけはちゃんと果たしてくれていて、その事実だけが救いだった。男だとか女だとかそういう柵から抜けて、生き物として捉えてほしいという祈り

10/21

自分の手を触る度に最低限の肉の上に皮を貼り付けただけのような貧相な物で繋がされる人のことが可哀想になる 人の手はいつだってあんなに愛しいものなのに

アスティエの食器を毎年一枚ずつ買って、どうしようもなくなった時に少し高い紅茶やコーヒーを淹れてみたり普段作らないような料理を作って並べたい。

「洗い物はあなたと食洗機、どっちがしてくれる?」

はきだめ

はきだめ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-10-05

Copyrighted
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