詩
未来
Chat gptは過去について語っているだけだ
AIも過去について語っているだけだ
科学も過去について語っているだけだ
あらゆる学問は過去について語っているだけだ
人間は過去のことしか知りえないからだ
幸い自然界はくり返しを好むので
人間は過去の経験を踏まえて未来を予想できる
都市社会は予定調和で満たされている
私たちの周囲は過去ばかり
虚無としての未来を私たちはいつか知るのでしょうか
文明が加速すると嫌でも向き合わないといけないのでしょうか
疑う
疑うことは生きること
疑う力は生きる力
疑っている時点で生きる方に賭けている
疑うという行為の土台には生への信仰がある
信仰なくして疑惑は成り立たない
疑うことはつらいことだ
生きることはつらいことだから
死に包まれる方が心地いいのかもしれない
それでも私はまだ疑いたい
死を受容することで疑いから解放されるのだとしても
科学による隠蔽
科学が成立するためには隠蔽しなければいけない
科学は成立当初から何かを隠してきた
隠すことで科学は成功した
科学は初めに視野を狭く限定する
まずは視野狭窄で頑迷にならなければいけない
そうして限定された視点を基に作られたものが
社会の中に現れ浸透していく
そういうものを人々は消費して使い慣れていく
やがて誰もが原初の狭い視野を共有せざるをえなくなる
初めに隠蔽されたものはなんだったのか
散歩
意味をたどることに疲れた
もう考えなくてもいいよ
ひたすら感じればいい
空はずっと青いままだ
もっといい加減になればいい
とか言って素直さを押し付けてくるのは嫌だな
やっぱり自分の中には二人以上いるのだ
考えないでいようとしてもそれは無理だ
心を落ち着けようとすると耳鳴りが聞こえる
ずっと脳裏で偽の音を響かせてくる
考えずに歩こう
やがて言葉は出てこなくなる
万物は落ち着きを取り戻す
世界の原初の安寧性に触れた心地になる
俺は次第に沈みつつ浮上していく
しかし引き裂かれてはいない
みんな溶けていく感じだ
豊かな絶望
みんな絶望している
何もかも達成してしまったから
先人の苦労も犠牲も忘れ去られる
土と共に生きていたのも今は昔
もう農業は工業に守られている
すでにファッション化されてしまった
製品はいくらでも並んでいる
生産は遠いところで行われているらしい
際限のない消費に苦しめられる
消費が虚無を生み出すのだとしても
昔の生産が身近にある時代には戻りたくない
そしてこの流れは終わることはない
いずれこの虚無感も風化していき
新たな精神を備えた人々が
新たな問題を起こして
新たな対立構造を作り出す
進め
罪を背負いながら
より荒れ果てた大地を見に行こう
いがみ合い争い合いながら
それでも私たちは否応なく変わっていく
前へ進むという前提は覆そうにない
生きようとする意志は
希望なんてけちな言葉で
片付けられるものではない
生きることは苦しむことだから
私たちは嫌でも新しい扉を開かなければいけない
何かを目指さないといけない
そうして苦しまなければいけない
その先にあるのは光なのか闇なのか
そんなことは知ったことではない
ここにとどまったままではいけないと
どこからか声がするからだ
空漠
目の前の相手を素直に信じる
自分に欠けていた能力だった
相手と向き合うための余裕がいつもなかった
いつでも内面が混濁していてそれどころではなかった
落ち着いたころには周りに誰もいなくなっていた
いなくなったから落ち着いたのかもしれない
自分の中に空漠をつくること
ざらついた寂しさとともにあること
それを心がけても粘ついた悪意はやってくる
私は弱い人間だからどうしようもない
わかったようなことを言う技術だけ蓄積される
抑圧からの解放
代助は電車に乗ってどこへ行ったのだろう
最後の兄の言葉が痛かったことだけは覚えている
ノラは家を出たきり戻らなかった
彼女の旅は今も続いているのかもしれない
血を流したことで得られた自由
現代の私たちは何でもできるらしい
解放とは苦しいことだ
抑圧から解放されるのはつらいことだ
それでももう戻れないのだ
もう新世界を見てしまった
欲望を追求するのみだ
神は死んだらしいが罪はどうなったのだろう
二度も楽園を追放された
それでも進まなければいけない
タービンをまわさなければいけない
それが意志なのだからしかたがない
残されたのは死と俗悪だけだとしても
後悔
やっぱり無理なのだろうか
これまでずっと我慢ばかりだった
体裁が最優先だった
中身が本当に空っぽだ
まったくもって空虚なのだ
あんなにがんばってきたのに内面は空っぽ
外は猛烈で中は空漠
そうして馬鹿にされて蹴倒される
何度も愕然としてきたけれどまだ足りないらしい
不信心者の祈り
人の優しさに甘えてきたからいけなかった
他人の幸福を素直に喜べる徳がほしい
思考にとりついた毒素を浄化したい
人に優しくなるためには普段の言葉遣いから
いい加減変えないといけないですね
歪んだ精神にもたれかかったままではいけない
自身の心の中を澄明にできるように
過去の過ちも苦しみも抱きしめられるように
思考の流れをそのまま言葉に写すように
奥底にある汚泥にも光を見出せるように
腐敗した情念も抱擁できるように
詩