霧のようにすこしだけ残して

花は散りてその色となく詠むればむなしき空に春雨ぞふる
    ──式子内親王

 わたしのこころに浮んだ──
 それ等をいとおしく思う観念は消えた
 霧のようにすこしだけ仄じろいかげを残して
 輪郭なき薫だけを立ち 無としてしずんでいって──

 わたしはそれをすらいとおしいものだと──
 この期におよんでもかのような観念を浮ばせる
 その観念もさっと時にぬぐわれるように 消える──
 霧のようないたみを神経に残して 憧れにすくんで…

  *

 花は散っても 花弁は落ちているでしょう──
 それが優しい空に還ってからですよ──優しい歌が香るのは!

霧のようにすこしだけ残して

霧のようにすこしだけ残して

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-14

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