霧のようにすこしだけ残して
花は散りてその色となく詠むればむなしき空に春雨ぞふる
──式子内親王
わたしのこころに浮んだ──
それ等をいとおしく思う観念は消えた
霧のようにすこしだけ仄じろいかげを残して
輪郭なき薫だけを立ち 無としてしずんでいって──
わたしはそれをすらいとおしいものだと──
この期におよんでもかのような観念を浮ばせる
その観念もさっと時にぬぐわれるように 消える──
霧のようないたみを神経に残して 憧れにすくんで…
*
花は散っても 花弁は落ちているでしょう──
それが優しい空に還ってからですよ──優しい歌が香るのは!
霧のようにすこしだけ残して