まだ薄暗い朝、雨がしとしと世界を埋めている。 雨に埋め尽くされている地上と天空にイメージを走らせると、地上が雨に埋もれた、深海と似ていると気がつく。 分厚い雲に光は遮断されて深海魚のように、生きている自分たち。 けれど、人々は海の深海には研究熱心だが、隣同士にいる雨の深海の、地上の僕たちには研究熱心とは言い難い。 その目を瞑って生活しているここの人々に、僕は不思議でたまらなくまた雨に思いを馳せていく。
ゴキブリは自分たちの歴史を振り返る。 そして、新たな住処で起こっている、異様さについて、語る。 それは自分たちは常に訳も分からぬまま悪で、迫害を受けていると。 しかし、迫害を受けている自分たちよりも、加えている人のようが、窮地に立たされているように感じている。 ゴキブリの想いをつらつらと語る噺。
ひと夏の蝉のセリフ。 蝉からみた、猫やゴキブリを通して見える、人の接し方の絶望的な差。 同じ命というけれど、という、蝉の声にのせて。 陽気に、皮肉にうたいましょう。
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』の番外編2です。 アサヒとナツの、はじめての動物園デート。 相変わらず笑ってばかりのふたりが、目を伏せた瞬間・・・。 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】 【番外編1】 【スピンオフ】も、どうぞご一読あれ。
電話で声を聴くだけで良い。それだけで自分の未熟な心臓は満たされるのだ。誰もが経験したであろう想いを今やっと初めて経験する高校三年生の恋愛模様。
アメリカルート66を旅するために集まった主人公と友人達がおくるドタバタ劇。 ミステリー要素も若干入ってますが基本コメディです。読んで笑ってください。
1982年、今から三十三年前の11月26日。 前代未聞といってよい事件を起こした天才青年 Raymond Kobayashi。 婚約者の一生を棒にふらす怪我を負わせながら、被害者方に好奇の目が注がれる事態を憂慮した警視庁が介入を見合わせたため、報道されなかったのみならず、Kobayashiは傷害の罪さえ免れた。 犯行に至るまでの異常な心理を記した、彼の遺書を見る。
長い夏休みを前に、初恋の相手に告白をした上原裕也だが、呆気なく振られてしまう。そんな彼の耳に響いていたのは、サックスという楽器の音色だけだった。 吹奏楽を通して変わる、少年の思考と感情。 同時に生まれる、新たな恋の蕾。 吹奏楽‐ブラスバンド‐を中心に、少年少女たちの長い夏が始まる。