隆一が高校生だった頃、三十歳になった自分など想像することもできなかった。知っている大人たちを見ても、まるで別次元の存在のように思えた。 三十歳になった時、隆一は思った。何だ、高校生の頃とちっとも変らないじゃないか。確かに、見た目は年相応に...
第14回 江古田文学賞落選作。亡父が遺したメモをもとに、想像(妄想?)で戦後から現代までを短編に押し込み、その時代を生きた人物(父)を描こうとした作品になります。
「ねえねえ、六平太、また忍術見せてよ」そうせがんできたのは近所に住む御家人の長男坊、松之介だった。六平太は一瞬自尊心をくすぐられたが、思い直してかぶりを振った。「だめだ、だめだ。忍術は見世物じゃない。それより剣術の稽古をつけてやろう…