zokuダチ エスカレート編・6
復讐のゲス・2
……こむぎといろはが追いつめられ、窮地に陥っている頃。
他の住人達にも既にじわりじわりと、ルーゼが仕掛けた
洗脳被害の脅威が及び始めていた。……此方は洗脳された
エレンとトーマスに愛野美奈子がマンション内の開放廊下にて
襲われていた……。
「さあ、君も来るんだ、ルーゼ様の元へ……」
「言う事聞かないと……、どうなるか分かってるわよね?」
「うううーーっ!何がルーゼよおっ!こんな時、セーラーVに
変身出来ればっ、黒子めっ、恨むわよおおーーっ!」
「美奈、此処は僕が何とか食い止める、だから君は
早く外に脱出を!」
「バカっ!アルテミスっ!そんな事出来るわけないで
しょーがっ!アンタはアタシの大切なパートナーでしょっ、
うう~っ、そ、その大切なアンタを置いて一人でなんか
絶対に逃げないんだからねっ!」
「……美奈……」
「いいわっ、痩せても枯れても、例え変身出来なくても、
アタシはセーラーV、今は愛と正義の戦士、愛野美奈子よ、
こうなりゃ素で戦ってやるわよーーっ!」
「美奈ーーっ!よせーーっ!」
……そして再び、場面はわんぷりガールズルーム……
「じゃあ、まゆさん、ユキさん、後はお願いします」
「はー!ちゃーんと連れて来てねー!待ってるよー!」
「ふ、二人とも、待って……!あ!」
リコとはーちゃんはその場から姿を消してしまう。
「さあ、いろはちゃん、こむぎちゃん、2人とも此方へ
いらっしゃい……、大丈夫、怖くないよ……」
「……大人しく言う事を聞くのよ!」
「……まゆ、ユキ~……、わお~ん……」
「……まゆちゃん、ユキちゃん、こんなの、こんなの酷いよ……、
こんなのって……、な……、ひっく……」
追い詰められたいろははどうする事も出来ないまま、
こむぎを抱いたまま、遂に言葉が続かなくなり、涙を
ポロポロ溢す……。いろはの溢した涙の雫がこむぎの
肉球の上へと静かに落ちる。いろはの悲しみを感じ取った
こむぎはある決意を……。
「大丈夫……、いろははこむぎが守るからっ!」
「……こむぎっ!?」
こむぎは人間モードになるといろはの前に立つと
大きく両手を広げ、洗脳まゆユキからいろはを
庇うのだった……。
「何のつもりなの……?」
「無駄な抵抗はよした方がいいと思うの……」
「いろは、此処はわたしにまかせて!早く悟の処へ逃げて!」
「……だ、ダメだよっ!大好きなこむぎを置いて
逃げられる訳ないでしょ!絶対に嫌っ!……嫌だよーーっ!」
「でもっ!此処で二人とも捕まっちゃったらどうにも
ならないよ!まゆもユキも助けられない!大丈夫、任せて!
そして、悟と一緒にジャミルの処へ行って!ジャミルなら、
きっと……、力になってくれるよ、ねっ!」
「……嫌っ!いやーーっ!……こむぎーーっ!!」
「……もう強制的に連れて行きましょう、まゆ……、
キリがないわ……」
「そうだね、ユキ……」
洗脳まゆユキ……、じりじりと二人に迫る……。だが……。
「……あ、ああああ……」
「何なの……、これは……、か、身体が……、痺れ……、
動けない……、ねむ……、い……」
「……?ああっ!!」
突然……、まゆとユキはその場に倒れてしまった……。
こむぎといろはは一体何が起きたのかと顔を見合わせるが。
二人は急に眠ってしまった様だった……。
「ど、どうなってるんだろう、これ……、ああっ!
まゆちゃん、ユキちゃんっ!大丈夫っ!?」
「いろは、ダメだよっ!今は逃げる方が先だよう、
必ずまゆとユキを助ける方法がある筈だよっ!
だからそれまで……、辛いけど……、わふ……」
「うん、分った……、まゆちゃん、ユキちゃん、……必ず
元の優しい二人に戻してあげる!だから、それまで……」
「いろは……!行こう!」
こむぎといろははまゆ達が気絶している間に、部屋から
急いで一旦脱出……。悲しさを堪えて……。そして、
廊下ではいろは達を必死で探していたらしき、大福を
抱いた悟の姿が……。
「あっ!いろはちゃん、こむぎちゃん!ぶ、無事で
良かった!……本当に!」
「……悟くん、大福ちゃん!」
「……!……!」
「……さとるーっ!……だいふくーっ!……わおーんっ!」
「……さ、悟く……、う、……まゆちゃんと……、
ユキ……、ちゃん……、が……」
「いろはちゃん……」
いろはは悟の胸の中へと飛び込み、堪えていた
涙を大放出……。いろはの様子から、悟は直ぐに
様子を察し、暫くの間、彼女が落ち着くまで
優しく抱き締めてあげるのだった……。悟も
いろは達と合流するまで、様子がおかしくなった
マンションの住人達に襲われており、どうにか
逃げ回り、漸くいろは達と再会出来たのである。
「……いろはちゃん、あの……、少しは……、おち……、
ついたかな……?」
「!!あ、悟君……、ご、ごめんっ!」
「い、いや……、ああはは……、し、幸せ……」
「わん……」
「……」
いろはは顔を真っ赤にしながら悟から離れる……。
悟も眼鏡から煙を出しながら赤面……。そんな二人を
じっと見つめるパートナーさん達のこむぎと大福チャンで
ありました……。
「他のみんなも心配わん……、無事だといいね……」
「うん、……でも……」
そう思いたいが、まゆ達もああなってしまった以上、
もはや絶望的な状況なのはいろは達も分かっていた。
……悟もマンションでの突然起きた脅威を目の辺りに
している……。それでも此処で立ち止まっている訳には
いかなかった。いろはとこむぎは一人でも仲間達の無事を
信じ、悟と共に階段を下りて行く。そんな3人を陰から
そっと見つめている人物が……。
「……やれやれ、どうにかなったか……、それにしても、
本当にこのおかしな状況は何なんだ……、ゆーな、また
何処に行ってしまったんだよ……、僕が付いていながら……、
僕はゆーなを守る忍びとして本当に失格なのかもな……」
こむぎ達を部屋で脅威からそっと助けたのは、忍スタイルの
陰守マモルだったのである……。
「……あれは……」
「しんちゃん達とひまだよっ!」
「……いろはちゃん、こむぎちゃん、悟おにいさん、
大福……、お、おおお~……」
「やい~っ!」
1階の廊下に出ると、ひまわりを抱いたしんのすけ、ボーちゃんが
オロオロしており、大慌てでいろは達の側に駆け寄って来る。
「……しんちゃん、ひまちゃんっ!ボーちゃん、無事で良かった……、
でも、お父さん達の姿が見えないけど、まさか……」
「とうちゃんも、かあちゃんも様子が急におかしくなっちゃって……、
急に喧嘩をはじめたんだゾ、それでルーゼ様、ルーゼ様とか
言い出した……」
「ボ……、ボオ……」
「……そんな……、この子達のお父さん達まで……、
何て酷い事を……、くっ……」
「……」
「……悟君……」
大福を抱いたまま悟が俯く……。子供達は無事であったが
マンションの状況は益々おかしくなって来ている様子
であった……。
「こむぎ、悟君、とにかくまずはしんちゃん達を
ジャミルさんの所へ連れて行こう、あの人なら、
絶対に洗脳なんかされない負けない強い心が
あるから……、こむぎの言う通りだよ、大丈夫、
きっと……」
「いろは……、よーし、行こうっ!みんなでっ!
わんっ!しんちゃん達もいっしょだよっ!ね!」
こむぎは不安そうに怯えている野原兄妹とボーちゃんを
安心させる様にそっとハグ、抱きしめた。いろはも
加わり、子供達を一緒に優しく抱擁。
「しんちゃん達も絶対私から離れちゃ駄目だよ、行こう!」
「おー、分った……」
こむぎがしんのすけとボーちゃんの手を握り、いろはが
ひまわりを抱く。その後に大福を抱いた悟がダッシュで
廊下を走り出した。
そして、再びジャミルの部屋
ジャミルの部屋には無事に逃げて来られた避難民が
増えていた……。美奈子とアルテミスもいる。エレンと
トーマスに襲われていた大ピンチの美奈子を救ったのは
またもや陰からのマモルの活躍である。マモルの助けにより
何とかエレンとトーマスを気絶させる事に成功。ジャミルの
部屋まで辿り着き、今、此処にいる。
「……全くモウ!冗談じゃないわヨッ!何なのヨッ!
こっちは危うく死にかける処だったってのっ!あんな
凶暴なの野放しにしてッ!」
「……すまない、俺達も一体何が起きているのかまだ
把握出来ていないんんだ……」
「……お姉ちゃん達が……、本当にご免なさい……、
私……、妹としてどうお詫びしていいか……」
「ハア、美奈、気持ちは分かるけど……、ユリアン達だって
エレンとトーマスは友達なのにいきなり襲われたんだぞ、二人も
危険な目に遭っているんだから……」
「そ、それはそうだけど……、あーっ!なーんか苛々するわっ!」
友人達の突然の暴走行為を美奈子達に必死で謝罪する
ユリアンとサラ……。美奈子も二人の辛い気持ちは
理解していたのだが……。どうにもこうにもならなかった。
「そうだぞ、美奈子、オメーもいつまでも怒ってんなよ、
あのさ、……サラといつも一緒に居た、あの無愛想なガキ、
ちゃんといるのか?普段無口だからいるのか心配でさ、
何処か行ってねえ?」
「大丈夫、いるわ、ちゃんと……」
「……僕に構わないで……」
サラの後ろからぬっと少年が顔を出した。
「心配ねえか……」
「フン……」
少年はジャミルからそっぽを向いて顔を背けた。
「……相変わらず可愛げがねえなあ……」
「ジャミル……、ごめんなさい、いきなり急に転がりこんで
来た上に私達ご迷惑を……」
「い、いや、別にサラは悪くねえから、ハハ……、
それよりも、俺、ちょっと外を見てくるわ、他に
まだ洗脳されてない無事な奴らがいないか確めてくる……」
「あ、ジャミル!だったら私も行くわ!」
「僕も!」
アイシャとアルベルトが立ち上がるが、ジャミルは拒否する。
「いいや、お前らは此処で待ってろ、俺一人で
大丈夫だからよ、それよりも皆を守っててくれよ、
頼む!」
「……ジャミル、分ったわ……、けど、無茶しないでよ……」
「気を付けて……」
「ああ」
ジャミルは頷くと、一人で廊下へと飛び出して行く。
ジャミルがいなくなった後、新しく部屋に逃げて来た
美奈子はぽつりと言葉を洩らした。
「……あの、さっきはごめんね……、サラちゃん、
ユリアンさん……、あたし、二人の気持ちも考えずに
酷い事言っちゃって……」
「いや、こんな状況なんだ、混乱するのは当たり前だよな……」
「そう、不安なのは皆同じ……、怖いよね……、でも、
お姉ちゃんもトムも……、きっと元に戻ってくれると
信じてるから……」
「……サラちゃん、強い子だね……、そうだよね、
一緒に頑張ろう、元気だそう!ねっ!」
「うん、美奈子ちゃん……」
「にゃあお!」
美奈子がアルテミスを撫でながらサラに言葉を掛けると
彼女も静かに笑みをみせるのだった。
……そして、一人でも無事な仲間を探そうと、廊下に
飛び出したジャミルは。
「はあ、だけど……、大変だなあ、今回も、やれやれ……」
と、言った処に、廊下でぼけっと突っ立っている学ラン
坊主頭がいた。谷口であった。
「おーい、何してんだよ、無事かっ!?」
「あ、ジャミルさん、どうも、丸井もイガラシも、近藤君も……、
急に何だか様子がおかしくなって……、ルーゼ様万歳と言って
何処かに行ってしまったんです、あー、僕はどうしたら
いいですかね?こんなの初めてで……、えーと……、困りました……」
困りましたと言いながらも、変らない表情で冷静に淡々と
話す谷口を見てジャミルはやはりこいつも大物の部類かなと
思いつつも呆れかえる……。
「とにかく、今は俺の部屋に行っててくれよ、他の皆も
いるからさ、詳しい事は後で説明すっからよ……」
「はあ、分りました、ではお世話になります……」
谷口は落ち着き払った様子でジャミルの部屋まで歩いて行く。
ジャミルはそれを見届けると、まだ無事な住人いるかどうかを
探して再び廊下を駆け巡る。
「あれは……、いろは達かっ!」
漸く下まで降りて来たいろは達が、洗脳された住人に
取り囲まれてしまっていたのである。
「……ホークさん、バーバラさん、お願い、やめて下さい!」
「……小さい子達もいるんだよう!」
「こんな事はもう止めて下さい……!僕達、同じマンションの
仲間じゃないですか!……どうして……、皆さん、僕達にあんなに
優しくしてくれたのに……」
「……」
いろは、こむぎ、悟の3人は必死でホーク達に訴えているが
聞く耳持たない様子だった……。大福も切なそうな表情で
悟に抱かれながらホーク達を見つめている……。
「小娘共、あんたらはルーゼ様とゲス様に逆らう敵だよ、
覚悟しな……」
「そう言うこっちゃ、悪く思うな、嬢ちゃん達、何なら
お前らも考えを改めりゃ、痛い目に遭わなくて済むんだぜ……」
「……びえええーっ!」
「ひまちゃん、泣かないで、大丈夫だからね……」
いろははしんのすけとボーちゃんを必死で後ろに庇い、
こむぎもいろは達を守る体勢に入る……。
「うわ、ありゃ、厚化粧オババとホークかよ、最悪だな……、
けど、やるっきゃねえか、……それに、普段殴られてる分、
今だけお返し出来るチャンスかもしんね、よーし!」
ジャミルは若干良からぬ事を思いつつも、両手に唾を
吐いて気合を入れると、いろは達の元まで走ろうとする。
……この男は実はちょっとやる気満々かも知れなかった。
……ガラガラガラ……、ガツン!!
「「んぎゃああーーーーっ!!」」
「あ……」
突如、穴が空いた天井から降ってきた大量の金ダライが
ホークとバーバラの後頭部に命中し、2人揃って同じ
ポーズで両手を上に上げたまま、その場にぶっ倒れ気絶。
後ろで様子を見ていたジャミ公はぽかーんと……。している
バヤイではなかったた。
「お前ら!」
そして、いろは達は状況を呆然と見ていたジャミルと遭遇する。
「……ああっ、ジャミルさんっ!」
「よかったー!ジャミルも無事だったんだねっ!わんっ!」
「本当にご無事で何よりです……」
「は……、いや、今お前らを助けに行こうと……、てか、
誰がやったんだ、コレ……、何なんだよ……」
ジャミ公は穴の空いた天井を見つめるが。……考えている
バヤイではなかった……コブを作って倒れて伸びている
ホークとバーバラ、……不安そうなこむぎ達を交互に見つめる。
「ジャミル、ルーゼが動き出したんだよっ、わたし達に
またイジワルしようとしてるんだよ、世界がくっつい
ちゃったんだもん、ルーゼとゲスがいつ出て来ても
不思議じゃないもん!」
「……まゆちゃんとユキちゃん、二人が洗脳されちゃって……、
こむぎと一緒にどうにか部屋から逃げ出して来たんです……、
悟君達とは再会出来たんですけど……」
「あの……、洗脳された皆も言ってたんだけど……、
ルーゼって何者なのかな……?もしかして、いろはちゃん達、
何か知ってるの……?」
「……悟君……」
いろはは悟の目を真剣に見つめる。……こうなってしまった以上、
もう本当に隠し事は出来ないと。異世界での出来事……。
全て悟にも真実を伝えなければならないと……。
「うん、悟君……、必ず話すから、聞いて欲しいの、
私達が夏休みに経験した本当の事、ルーゼの事も、
でも、今はしんちゃん達を守らなくちゃ……、だから……」
「分かったよ、いろはちゃん……、話せる時が来たら
聞かせてくれるかな?僕はいつでも君達の味方だよ……」
「悟君……、ありがとう……」
「……でも……、まだ此処のマンションにわたし達を
助けてくれるおともだちはいるのかなあ……?」
「オラの父ちゃんと母ちゃんも……」
「たいい~……」
「ボオ」
「そうか、お前らの親もか……、くそっ、相変わらず
汚ねえ事しやがる!ゲスとルーゼの野郎!!
取りあえず、お前らもまずは俺の部屋に来いよ、
他にもまだ無事な仲間が集まってるからよ…、
俺はもう少し、マンション内を見て回ってみるから……」
「……助かります、じゃあ、しんちゃん達も行こう!」
「いくわんっ!でも、ジャミル、気を付けてね……」
「……ジャミルさん、どうか無理しないで下さいね……」
いろは、こむぎ、悟はお子ちゃま達一行を引き連れ、急いで
ジャミルの部屋へと向かった。
「えーと、現時点で、まだ無事が確認出来てねえのは、
クローディア、グレイ、シフ……、ダガー、ガラハド、
ブラウにシルベン、ゲラ=ハ、ラグナの親父、マモル、
ゆうなと……、えとえと、……スネークの親父に……、
ティルの保護者のグレミオ、後なんかいたっけか、ま、
まあいいや……」
……何処までも存在を忘れ去られるドナルドと
ガーネル……、しかし、ジャミルはそれ処ではなく、
今はまだ洗脳の魔の手が届いていない無事な仲間を
これからルーゼ達の魔の手からどうやって守るか、
唯それだけしか考えられなかった。 無事を確認
出来ていない仲間は果たして何人正常でいてくれるのか、
そんな事をジャミルは考えていた。そして、ジャミルは
その後、危険を覚悟で一人マンション内を一通り、
こっそりと巡ってみたが、他に誰とも遭遇しない
どころか、……マンション内の部屋から何処も
物音一つしないのである。疲れ果て、いつの間にか、
自室がある1階へと戻って来ていた。
「おかしいな、洗脳されてる奴らも、後の奴らも
全然姿が見えねえ、これは……」
……きゃああああーーーっ!!
「しまった!あれは俺の部屋の方だ!やべっ!!」
悲鳴を聞き付け、ジャミルは猛ダッシュで自室の
方へと走ろうとするが、其処に2人の人物が
行く手を遮る……。
「よお、ジャミル!」
「ジャミル、相変わらず元気そうだな、マンション内を
散歩かい?……暇な奴だな……」
「ラグナ……、スネークのおっさん、あんたら大丈夫なのか?」
ラグナはいつも通り、飄々とした表情でジャミルに
近寄って行った。
「……ああ、実はね、俺、凄い方を今度取材させて
貰える事になったんだ、その名も、絶世の超美女、
ルーゼ様っ!!」
「ああ、ルーゼ様はいいぞ、絶世の美女だっ!」
「!!」
ラグナはジャミルに向け、いきなり狂った様に
マシンガンを撃ち出し、スネークもライフル銃を
撃つ。慌てたジャミルは持ち前のずば抜けた
運動神経を活かし、飛んで避けるが……。
「危ねえなっ!やっぱりてめえらもかよっ!
冗談じゃねえよっ!!」
「わりいねえ~、あんたは此処で死んで貰う事に
なってるんだよ、うん!」
「よし、大人しくこいつに当たって死にな……」
ラグナは悪気のない表情で、ジャミルに再び
マシンガンを向け、スネークは手榴弾を取り出す……。
「邪魔しやがって、くそっ!……いいぜ、そっちが
その気なら俺だってやってやるよ……」
ラグナ達に邪魔され、動けなくなってしまった
ジャミルはアルベルト達を信じ、今は仲間の
護衛を託すしかなかった……。
そして、ジャミルの部屋では……
「何処へ隠れようが無駄だ……、観念するんだな、貴様ら……」
「……覚悟する事ね……」
「大人しくしていて貰おうか……」
ジャミルの部屋に突如現れたのは、アイスソード所持の
グレイ、クローディア、そして、ガラハドであった……。
「グレイ……、そんな……、あなた達まで……、ねえ、
嘘でしょ……?ねえ……」
アイシャが震える声でグレイに問い質すと、グレイは
容赦せずアイスソードの矛先をアイシャに向け、冷たい
笑みも見せた。
「知らんな、我らはルーゼ様に従うのみだ、フッ……」
「アイシャ、……無駄だよ、下がって!シフも
洗脳されてしまったらしくていきなり僕に
襲い掛かって来たんだ……」
「アル……、そうだったの……、でもっ、そんな……、
こんなの酷いよ……」
「アイシャ、僕だって悔しいよ、でも今は
どうしようもないんだ……」
アルベルトは悲痛に暮れるアイシャを庇いながら、懐から
スリッパを取り出した……。
「ねえ、アル……、今、真面目な場面なんだよね?ねえ……」
「……ダウド、うるさいなっ!基本、この話じゃ
真面な戦い方をするのは許されないんだからさ!」
「はあ、でも何かずるいよお~、あちらさんばっかり、
何でいつもアイスソード所持許されてんの……」
「フ、貴様らみたいな無能なバカ共は、最低、ひのきの棒+
ステテコパンツがお似合いだ……」
「なんだよお!又ド○クエから何か引っ張ってくる!」
背一杯の抵抗で吠えるダウドを見、馬鹿にした様に
グレイ達が笑った。
「さあ、グレイ、そろそろやってしまいましょう、
こんな人達を何時までものさばらせておいても
うっとおしいだけよ……」
「そう言う事だ……、俺も久しぶりに暴れてやろう、
行くぞ、グレイ……」
「ああ、そろそろ行くか……」
「くそっ、やっぱりやるしかないのか……」
アルベルトは苦痛に耐えながらも真面目な顔で
スリッパを構えた……。
「わ、わたし達も戦うっ!戦わなくちゃならないのなら、
……絶対逃げたりしないんだから!いろは、又一緒に
おしりパンチだよっ!……ふんっ!」
「そうだね……、この子達は私達が守る!」
「……え、ええーとっ!分かってるさ、大福っ!」
「♪」
悟に向かって大福が静かに頷く。いろは達を絶対に
守るのだと、悟も一歩を踏み出す。
「おお、いろはちゃん、こむぎちゃん、悟おにいさん、
オ、オラだって戦うゾ!例えクローディアおねいさんだって、
みんなをいじめる悪い人になっちゃったのならオラ、でっかい
おならするからね!!目をさますんだゾ!!
「やいやいやー!」
「ボオーッ!!」
「う、う……」
絶対逃げたりしない……、こむぎのその台詞に、ヘタレな
ダウド君の心がちくちくと……。
「……麗しのレディ、クローディアにまで手に掛ける奴が
いたとは……、絶対許しちゃおけねえ、でも今は例え
レディが相手でも、オレも戦わなくちゃな……」
「俺もやるっ!今こそ男になるんだ、……サラ、安心しろ、
エレンもトムも俺が絶対助ける!!」
「……ユリアン……、うん、信じてる……」
少年とこむぎ、いろはと共に部屋の片隅で野原兄妹、
ボーちゃんを抱きしめながらサラが小さく微笑みを
浮かべるのだった。
「オレもだっ!元・天魁星をなめんじゃねえぞっ!!
……オレの大事なダチによくも変な事しやがってっ!
お前ら絶対許さねえかんな!!」
シグも立ち上がり、目の前のグレイ達を強く睨み返した。
「……知らんな、お前の連れに手を出したのは俺達では
ないが?責任を押し付けないで貰いたいのだがな……?」
「うるせーこのやろ!敵に回ったら皆同じだっ!覚悟しやがれ!」
「……天魁星……、そうだね、今の僕にも……、何か
出来る事があるならば……、……例え右手の力は
使わなくても……」
シグの台詞にティルも静かに頷き、自身の右手を摩ると
シグの横へと静かに並んだ。
「か弱い女の子だと思って舐めてたら痛い目に遭うわよッ!
いろはちゃん、こむぎちゃん、あたしじゃまゆちゃん達の
代わりにはなれないけど、今はあたしが皆のチーム仲間に
なるわ!一緒に戦いましょっ!」
「美奈子ちゃん……、うんっ!」
「♪わんわーん!わんっ!」
次々と反旗を翻し、立ち向かおうとする仲間達。
だが、状況はどんどんエライ事になっていた……。
「……あわわわ~、オイラどうしたら……、アイシャ……?」
……オロオロするダウドを尻目に、アイシャが
涙を溢しはじめたのである……。
「やだ、やだよ、こんなの嘘だよ、……どうして皆で
争わなくちゃいけないの……?」
「アイシャ……、うっ、ジャミルはまた出てったきり
戻らないで……、ホントに何やってるんだよお~……、
アイシャが泣いちゃったじゃないか……」
「……リコ、はーちゃん……、駄目、駄目だよ……、
行かないで……、お願い……」
「みらい~、モフルン何もみらいにして
あげられないモフ、……悲しいモフ……」
ベットで魘されるみらいの手をそっと握り
モフルンも悲しむ……。
「僕も戦った方がいいんでしょうか……、
何か出来る事があれば……、そうだ、バット……」
……そして、どうしていいか分からない、本当に
騒動に巻き込まれてしまった一般人の谷口……。
このままでは狭い部屋が一瞬にして戦場に
なりそうであった……。
「おい、あんた達……」
「……シフっ!!」
アルベルトが叫ぶ。部屋に又急に現れたのは
シフであった……。
「……一旦引きな、ルーゼ様から大事な話があるそうだ……」
「何だと?これからだと言う時に納得出来んな……」
「……ルーゼ様に逆らおうってのかい、ええっ!?」
シフはいつもの強い口調で渋るグレイを一括する。
グレイは仕方なしに持っていたアイスソードを
渋々下げた。
「仕方がない、ではいったん下がるか、ガラハド、
クローディア、行くぞ……」
「……了解……」
グレイの言葉に他の2人も静かに頷いた。
「……標的、ナンダ・カンダ家だ、他のあたし達の
仲間も其処に向かっている筈さ……」
「ナンダカンダ家って……、う、嘘でしょっ、お願い、
シフ、あなたまで……、もうあそこの人達を
巻き込まないで!これ以上酷い事するのはやめてっ!!」
「……うるさいよ、何も出来ない小娘は黙ってな!」
「シフっ、待って!あなただって自分の強い意志を
持っている筈なんだ!思い出して、シフ……、あなたは
洗脳なんかに絶対負けたりしない強い心の人だよ……、
僕は知っているよ……」
しかし、シフは必死で訴えるアイシャとアルベルトの
声を無視し顔を背ける。
「随分生意気な口を聞くようになったじゃないのさ、坊や、
あたしと戦う気なんだね、……いいだろ、あんたのその覚悟、
見届けてやる、ナンダカンダ家まで来な……」
「……シフっ!!行っちゃ駄目だっ!!……シフっ!!」
冷たい言葉をアルベルトに吐き、グレイ達と共にシフは
その場から姿を消すのだった……。
そして、ラグナとスネークを相手に一人で戦っていた
ジャミルは……。
「……お?何か今、ルーゼ様からお告げがあった、
ふむふむ、そうか……、ありがたーい、ありがたーい
ないったら、分った、んじゃ、今そっち行きますねーっと!
スネーク君、行こうぜい!」
「了解!」
ラグナはいきなりスマホを取り出し、お告げだの、
とんちんかんな事を口走り出す。何だか完全に変な
方向に走ってしまった彼であった。
「にゃにい……?おい、一人で何ブツブツ言ってんだ、
コラ……、俺にもちゃんと分る様に喋れってんだよ!」
「ははは、わるいねえー、ジャミル、残念だけど
アンタの相手は此処までなの、命拾いしたねえ、
んじゃ、俺は皆の処に行きますね!じゃあ!」
「だからっ!ちゃんと説明……、う、うわ!?」
ラグナは自分に突っ掛かってこようとしたジャミルに向け、
再びマシンガンを発砲した。
「ねえ、折角命拾いしたんだからさあ、駄目だよって
言ってんの!これ以上近寄るな!さあ、良い子は
帰って寝な!……あばよ!」
「ラグナ、こいつはどう見ても良い子じゃねえだろ、
完全な不良だぞ……」
「あ、そっかあー!」
「うーるせええ!おい、ちょっと待てっ!あ……」
ラグナとスネークはあっという間にその場から姿を消し、
残されたジャミルはどうする事も出来ず、唯、地団駄を
踏む事しか出来なかった……。
「逃げられたか、……くそっ、早く何とかしねえと
このままじゃ……!」
「ジャミル!」
「……マモルか?」
ラグナの次に飛び出してきたのは、厚底牛乳瓶メガネの
陰守マモルであった。
「お前は……、無事なんだろうな……?」
と、口では言いつつも、何となく警戒するジャミル……。
「僕は正気だよ、それより大変なんだ、ゆーなが
連れて行かれた……」
「何だと……?」
「……僕がついていながら……、僕はこれじゃ
忍として失格だよ……」
「誰に連れて行かれたんだよ、ちゃんと話してくれ!
大事な事なんだ!!」
「それが……、僕にも何が起きているのかさっぱり
分からないんだ、……だって、ゆーなを連れて行ったのは、
掃除屋のブロリーさん達だったからさ……、僕の目の前で
本の一瞬で消えたよ……」
「……の、のおおーーっ!!本当か、まさか、まさか、
……んじゃあ、掃除に来てたブロリーも洗脳したんかい!?」
「いたよ、確かに……、一緒に緑色のハゲた頭の人もいたな、
ベジータとか言う人も……」
「……んぎゃああーーっ!!」
マモルが俯いて信じられないと言った複雑そうな表情を
ジャミルに向ける。厚底牛乳瓶メガネの下から、素顔の
イケメン顔が少しだけ垣間見えた。掃除屋とは言え、
洗脳されたらかなり厄介な部類も完全にルーゼ側に
付いてしまった事が確定した。……たまたま此処にいた為、
暇つぶしに洗脳したんだと……。
「やっぱり……、くっ、どんどん酷え状況になって
来てやがる……、お前にもちゃんと説明しとく必要が
あんな、とにかく俺の部屋まで……、って!
……今、俺んとこもヤバイ状況なんだったわ!」
「大丈夫、僕も行く、それと、この娘を
我が生贄としてルーゼ様に捧げるとも
言っていたんだ……、誰なんだい?
ルーゼって……、教えてくれないかな……」
「あまりもう時間がねえけど、ちゃんと説明すっから、
お前もすぐ来てくれ!」
「分った……、いざとなったら僕も戦う覚悟でいる……」
洗脳せず、直に捕らわれたらしき、ゆうな、……一体
ルーゼが何を考えているのか、ますます分らずじまいの
ジャミルであったが、今は残っている仲間が心配で、
マモルと共に無我夢中で自分の部屋まで走った。
「……皆!遅くなっちまってすまねえ!」
「ジャミル……、や、やっと来たよお……、ううう~……」
ジャミルが部屋に戻り見た光景は……、意気消沈し、
疲れて憔悴しきった仲間達の姿。ダウドはジャミルの
姿を見るなり今にも掴みかかって来そうな勢いであった。
「……遅いよお!一体何やってたんだよお、馬鹿
馬鹿馬鹿っ!こっちは大変だったんだからね!!」
「俺だって大変だったんだよ!急にラグナとスネークの
奴が襲い掛かってきやがって……」
「……そう、ラグナさん達も洗脳されてるのね……」
「アイシャ……」
アイシャがジャミルの顔を見るなり、悲しそうな
表情を向けた。
「ジャミル……、グレイも……、クローディアも……、
ガラハドも、そして……」
アルベルトの沈んだ表情を見て、ジャミルは大体の
事態は予測出来たのである。
「……お前が言ってた大変な事って、シフの事だろ……、
ホークとバーバラがこむぎ達を襲ってたのも見たよ……、
もうどうしようもねえな……」
「……うん、僕に宣戦布告だよ、けれど、僕は
怯まないから、決してね……、大切な仲間を必ず
取り戻したい、シフも……」
アルベルトが唇を噛み、静かにジャミルの方を見つめる。
その表情は硬く、大切な人と戦うかもしれない覚悟を
決めた様であった。
「それは俺も同じだ、アル……、ま、普段、ケンカ
ばっかしてっけどな……、あいつらもいなけりゃ
いないで……、淋しいしな……」
「うん、そうだね、ルーゼとゲスの奴……、
絶対に許せない……」
「……洗脳された皆はナンダカンダ家の方に向かった
らしいの、ルーゼとゲスが又領主さま達に何か大変な
事をするんじゃないかしら、……急がないと取り返しの
つかない事になるわ!!」
「……アイシャ、分ったよ!ウゼー糞バカ奴らを
止めねえとな、急ごう!!」
「もしかしたら、……ダガーも洗脳されちまってんの
かもな、けど、考えてる暇はねえ、オレも行く、
レディ達を悲しませる奴は絶対許さねえ!!」
「……僕も一緒に行かせて貰う、グレミオも
捕まっているのかも知れない……」
「私達も行きます、まゆちゃん達を絶対に助けて
取り戻すんだから!!ね、こむぎ!」
「わんっ!」
「!僕も行きます、いろはちゃん達を支える
サポートがしたいんです!」
「……俺もだ、……もしも、例えエレンと一戦
交える事になっても……」
「へえ、勝てるの?エレンに……、自信ある?」
「うっ、それは……、あーっ、もうっ!あああ!
言わないでくれええっ!!」
「お前なあ……、こんな時に構うなよ……」
「だってえ……」
ジャミルがダウドの方を白目で見た。いつもエレンの尻に
敷かれているユリアンを心配して言っているのか……、
それともからかっているのか……、ダウドの容赦ない
突っ込みに困って頭を振りまくる緑バカ……、その姿は
まるで風に揺れる草……、そのまんまだった。
「オレもっ、久々に悪ィ奴ら相手に暴れられると思うと
興奮してきたっ!よーし、マリカ達を助けに行くぞっ!」
「……あの~、聞きたくないんだけど、本当にブロリー達も……?」
ジャミルはダウドの方を向いて目配せする。その様子を見て、
直ぐにダウドは現状を理解しすっ飛びあがった
「はいはあーい!あたしも行くわっ♡同行のお供には是非、
この愛野美奈子を連れてって!」
「……美奈、遊びじゃないんだぞ、君はっ!」
「アルテミス、うっさいっ!別にいいじゃないのよォー!」
「ジャミル、僕も当然固定メンバーに入れてくれるんだろ?
……ゆーなの事もあるんだから……」
「……ジャミル、これって何か……、凄いよお~……」
「ああ、RPGのイベントで仲間を選んで連れていく
選択式みたいになってんなあ~……」
仲間達は次々と同行を我も我もと名乗り出る。……しかし、
これだけの人数、全員連れていく訳にはいかないので、
何人かマンションに残って待っていて貰うメンバーも
必要である。しかし、名乗りを上げたほぼ全員が
同行を希望しているので、誰が行くかで別の意味で
またぎゃあぎゃあ揉め事が起きそうであった。
「あ、じゃあ、あの、オイラが此処に残るよお、
そうすれば、一人でも同行出来る権利が高くな……、
あだだだだ!」
「オメーは行くんだよ!……レギュラー4人組の
中の一人なんだからよ……」
「あだだだ!拳ぐりぐりしないでよおお~!
ジャミルのアホおーー!」
「……ま、まあ、そんな危険を侵してまで付いて来て
くれようとする皆の気持ちは嬉しいよ、ありがとな、
でも、こいつらもいるし、子供達のケアが出来る
何人かは此処に残って欲しいんだよ……」
「おお~?こいつらってオラ達?」
「やいー!」
「ボオ!」
「私も此処に残るわ、皆を信じて、此処でお姉ちゃん達の
帰りを待つわ……、ね、あなたも私を守ってくれるでしょ?」
「……ふん、気が向いたらね……」
「よし、サラと、可愛げのねえ……、のは大丈夫と
して、後は……」
結局。大揉めの際に今回同行が決まったのは、ジャミル達4人と、
ジタン、シグ、ティル、ユリアン、マモルである。谷口も
マンションに残り、後輩達の帰りを待つ事となった。
「……すみません、何も出来なくて……、僕も戦おうと
思えば戦えますが……、あの、やっぱり部屋からバット
持って来ましょうか……?」
「い、いや、無理しなくていいから、此処で皆と
待っててくれ、……な?」
「そうですか、本当にすみません、……あの、丸井達の事、
どうか宜しくお願いします……!」
「ああ、任せときな!」
谷口がペコリとジャミルに頭を下げた。表情はあまり
変わらないものの、彼は困った後輩達を心から本当に
心配しているのだった。
「はあ、今回私達はお留守番ですかあ~……」
「わん~……、残念だねえ……」
ジャミルは考えた末、前回同行してくれたこむいろコンビに
今回は残って貰う事にした。何より、彼女らはゲスに逆恨み
されている為、余計危険だからである。
「大丈夫、いろはちゃん達には僕が付いてる、
絶対に守るよ!」
「……悟君……」
「……何か始まったし……、あ~、心配すんなよ、絶対
みんな連れて戻って来るからよ!」
「はい、ジャミルさん、どうかまゆちゃん達を……、
宜しくお願いします!」
「絶対絶対、ちゃんと帰って来てね!……約束だよっ!」
「ねえ、お願い、ユリアンも無茶しないでね……」
「サラ、分かってるから、此処に帰って来る時は
エレンもトムも一緒だ!」
「うん……」
「フン、知らないよ……」
ユリアンは少年とサラの方を見て笑顔を見せた。
「ハア……」
「何?ジャミル、何でさっきから人の方見てるのよう……」
「いや、何でもねえ……」
「変なジャミル、変なのは本当にいつもだけどね……」
アイシャも又、充分危険に巻き込まれる可能性が
ある為、ジャミルは出来ればアイシャにも
マンションに残って欲しかったのだが、それを
彼女に言った処で、ジャジャ馬な彼女が言う事を
聞く筈もなく諦めていたのであった。例え柱に
縛り付けても後を追ってくるだろうから……。
(こうなったら……、今回は俺が常に全力モードで
守ってやらなくちゃな、よし……、絶対に目を
離さねえぞ……、何が何でも……)
「はあ、じゃあ、簡単に皆にも説明しておくよ、
……今回の事件の張本人の、ゲスとルーゼの事だ……」
ジャミルはこれまで伏せていた、この夏での不思議な
異世界での出来事を……、身体が入れ替わってしまった
ジャミルとアイシャ、自分達の事も等々、今まで
知らなかった皆にも遂に真実を話始めるのだった……。
「……何て事だ、ジャミル、お前は何処まで
羨ましい奴なんだっ!……ア、アイシャと……、
身体が入れ替わっただとお~!?……くっそ
おおおーーっ!!」
「おいおいおい……、あのなあ……」
〔げんこつ〕
「ジタン、ふざけてる場合じゃないんだよ、
一緒に冒険へサポートした僕達は本当に
大変だったんだよ……」
「たく、ジタンの奴……、けど、好きな子と
入れ替わりかあ、いいなあ、俺もエレンと……、
い、いや……」
興奮し始めたジタンをアルベルトがげんこつ。本来なら、
お仕置きはダガーの役目なのだが、今は彼女も行方不明の
為、代わってアルベルトがその代理になった。
「そうだったの、この島に突然現れた街も、皆さんも……、
元々は異世界から来たのね……」
サラが不思議そうな表情を向けた……。
「一応、……僕も凄くびっくりしています……、
本当です……」
口数の少ない大人しい谷口もかなりびっくりしている
様子。やはり表情はあまり変わらないが……。
「まあ、ゲスとルーゼはうっかりついて来ちまった、厄介な
細菌みたいなモンだ……、ゲスは恐らく俺らを逆恨み
してるんだろうし、ルーゼは又奴の背中を押してんだと思う、
……あいつの本当の目的は分からずじまいだけどな……」
ジャミルは今まで事実を知らなかった皆にも漸く全て
話す事が出来たが、今になって急に、あの朝に黒子から
寝ぼけ眼に聞いた電話越しの言葉を段々うっすらと
思い出していた……。
……この島に……、どうやら悪い風が吹き荒れそうなのです……
zokuダチ エスカレート編・6