《凪ぐゆらぐ》ー小連作短歌ー
濡れ濡つつ襟みだれ ざわめく下駄箱あさ顔かをれる
マエストロ見当たらなくて譜面台 先輩風に髪を吹かれて
尾ひれ振り背びれ伸ばして階段を泳ぐ私に見惚れる噂
野晒しの場所に集いし傘たちが喫みだす社会 灰叩くせんせい
テスト前占う天気雨みたく手にもつ上履き ありをりはべり
まんまるな月に日和れば落ついいえ パピコ好きずき二つに割れて
次々と引っ付く頁ぼやく図書係の手から絵本は渡り
コンコンと叩ける扉失礼して吠えず中原中也を借りたく
可動域刈り上げ頭のふるいいえ火のない所煙らす吐息
尖りなき月に日和れば凪ぐいいえ 見ゆるプールの透かしにゆらぐ
《凪ぐゆらぐ》ー小連作短歌ー