フリーズ239 埼玉文学賞『小江戸川越』『春日部日記』

小江戸川越

川越に行った
古い町並み
時の鐘が時空を超える
小江戸川越
スタバがオシャレだった
夜に徘徊
この街は静か
カメラを持つ叔父と
スマホ片手の僕と

5月には鯉のぼりが飾ってあったらしい
今ではもう跡形もない
でも、ここに時代があって
歴史があって
その中に変わらないものとしての結晶がこの街並みなら、きっとそれはとても大切なものに違いない。

夏の夜の川越は涼しかった
風が吹いて心地いい
この街並みを記憶に残す
それは永遠に刻む自傷行為のようなもの
小江戸川越は美しい

時の鐘が鳴った
時空が途切れてまた繋がる
そんな妄想さえも内包して
この街は静かな夜を内包する

記憶を留めて三千世界
時を超えてトーラスの森へ
イデアの海を愛で満たした
そんな幻想さえも内包して

この街は眠らない
時の鐘が鳴り響く
その音がやけに終末のような気がして
僕は焦って振り返る
そこには叔父の姿はなかった
僕は誰?
ここに来たのは何故?
何故呼ばれたの?
何のために生まれたの?
何をしに来たの?
分からない
全てが分からないよ

埼玉に来たのは親の実家に帰るため
川越に来たのは小江戸の街並みを見るため
でも、それが人生の目的ではない
僕は何のために生まれたのか
それだけが分からない
分からない
分からない
でも、それを探す旅路だろうからと
僕は一歩をあゆみ出す

小江戸川越、夏の夜
涼風に詩を乗せては唄う

魔法の街 春日部

人生初の春日部に来た
春日部駅の反対側にはどうやって行けばいいですか?
と駅前のタリーズの店員に聞く

「10分ほど歩いて踏切かトンネル。それか構内通って通行料払うかですね」
「まるで関所ですね」

パスモをタッチして、改札を通ろうとすると通れなかった

「あの、通るだけなんですが」
「それではスマホをここにどうぞ。160円頂きます」

そんなにとるんかい!
僕は驚いた
まるで関所
春日部駅は地を断絶する関所のようだった

パスタ専門店に入った

魔法のパスタ 春日部店

僕以外の16人の客は全員女性だった
店員も女性だった
僕一人だけ男だった
意外と嫌ではなかった

注文してしばらく待つとパスモが運ばれる

麺がもちもちしていた
熱々で、石鍋がすごい
グツグツしてる

モッツァレラチーズが7つも入っていた!
バゲットおかわり自由!
スープには卵とコーン
ドリンクバーもある

なんて贅沢な店だ
僕は時を忘れて堪能した

その後湯楽の里に行って寛いだ
こんな休日、至福だった

一昔前ならこんな美味しい料理を食べられるのも、こんなゆったりとした風呂に入れるのも、貴族の特権だったはず。だが、文明の進化で僕たちは平凡に当たり前のように幸せを享受できる時代になった。
それを当たり前に思うか、感謝して生きるか、その違いは大きいように思う。

春日部駅前のクレヨンしんちゃんの写真を撮る
この街また来よう

ここで春日部に詩を贈る

夏のある日に訪れた
この街、暑いが、それもいい
美味しいご飯に、温泉は
至福の時を過ごせるよ

記憶に残すこの記録
永遠刻んでないものねだり
でもね、この夏忘れない
きっといつまで忘れない

クレヨンしんちゃんの住む街に
僕も訪れて思ったことは
意外と普通の街だけど
思い出になるくらいには
素敵な街だと思ったよ
また来よう
また来よう

フリーズ239 埼玉文学賞『小江戸川越』『春日部日記』

フリーズ239 埼玉文学賞『小江戸川越』『春日部日記』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-28

Copyrighted
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  1. 小江戸川越
  2. 魔法の街 春日部