若き日の恋物語

私の青春時代の美しくも悲しい恋

出会い

若き日の恋物語
もうあれから何年経ったのだろう。あの渚は遠い、遠い昔の思い出となっても未だに心に沁みついて離れない。
  あれはバレンタインの日だった。小夜子から貰ったプレゼントを今でも大事に持っている。それはチョコレートと一緒に添えてくれたライターだ。それもただのライターではない。そのライターには坂本(さかもと)健一(けんいち)の誕生石のオパールが組み込まれていた。こんなライターを見た事がない。探すのが大変だっただろう。それも愛情の現れか。
 堀尾(ほりお)小夜子(さよこ)も同じく誕生石はオパールだった。つまり二人共十月生まれ、そんなせいか気が合う。俺も彼女にオパールのネックレスをプレゼントした。オパールの淡い輝きに、恍惚の誘惑に誘われ二人は完全に恋に落ちた。ただオパールは他の宝石に比べて柔らかく、極度の熱や乾燥によってひび割れを起こす傷つきやすい。そう恋とは淡く壊れやすいものだ。だがその淡い輝きはどの宝石よりも美しい。あの日の渚の想い出。今は遠く……まるで幻のような恋だった。

出会い
 
昭和三十九年まだ新幹線が開通して間もない頃の事だ。そしてこの年アジアで初めてオリッピックが東京で開催された。世の中は間もなく、いざなぎ景気に入って行く時代だ。俺は東京に本店がある大きなデパートから転勤して、この地方の街にやって来た。とは言ってもデパートの正社員ではなく、デパートにテナントで入っている会社で全国のデパートに店舗があり名の通った贈答用菓子店である。このデパートは駅前にありこの街で一番の老舗で一番大きな建物である。特に女性には人気の職場だ。ここで働いている人は千人近く居るかも知れない。まず今日から自分の職場となる売り場に来て周りの売り場の人たちに挨拶に廻った。勿論デパートの正社員もいるが圧倒的にパートやテナントの従業員が大半を埋めている。俺はテナントの店員である。まず自分の職場の人たちへ挨拶する。
「今日からこちらに配属となりました坂本と申します。宜しくお願いします」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。わからないことがあったら遠慮なく仰ってください」
 そんな親切な挨拶が返って来た。どこでもそうだ最初が肝心。少しでも悪い印象を与えたらそれはもう大変、少しでも良い印象を残すて置くべきだ。そもそもデパートで働く店員は女性が大半を埋める。そんな中で俺は店員として派遣されてきた。店員に欠かせないのが接客だ。俺の特技と言ったら話し上手なところか。贈答品だからお客はどれにしうかと迷う。俺はお客様に送り主や年齢層を聞き贈答に相応しい物を進めた。東京でもそうだったが俺を指名して買ってくれる人も多かった。東京から情報が入っているのか「坂本くんは接客が上手いそうね。頼りにしているわ」そう言われた。

若き日の恋物語

7割ほどが実話です。

若き日の恋物語

初恋、燃える声、そして別れの時

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted