短歌修行6

技術的な事柄がようやっと感覚的に問題視できるようになった。そういう実感を持てるようになったから、やっと短歌の世界の入り口に立てたと言葉にすることを自分に許しています。さあ、ここから。どれだけ理屈で考えても、実際に手を動かす段階ではその全てが遠のき、その都合に手探りで事に当たる他ないから。詠んで、詠んで、詠もう。

朱色が目立つ離婚届ふーふーする喫茶にクリームソーダ


こけこっこ辿々しくてははは パカっと子が黄身守って目玉焼き


隠し子にしーっと立てた指掴む鬼に耳打ち 空き缶ひとつ


《高台》
押し黙る冬のまごころ冷やご飯付き添わぬ色持ち上げて食む

もういいと揃えて置いた箸の先 途絶えかむほぞ降りて初雪


《走る》
深夜逆光 胡瓜売り置いてけぼりした系統のバスに揺られて

胡瓜売り置いてけぼりした系統のバスで抱える卵のパック


《新人》
「中嶋」は正しく読まれず最後まで絶やさぬ返事パンプスサーブ

「中嶋」はいまだ正しく読まれず 振る中華鍋に踊るまかない


《磁器》
三日月が見せれぬ丸み()となりて筆撫でる絵師脇の下搔く

三日月が見せれぬ丸み()となりて餅畳む人股をくぐる()

三日月が見せれぬ丸み()となりて焼かれた烏絵を付け白夜


《忙しない》
路地裏で篠突く雨に休む傘 オーダー復唱無精髭な()

幸あれと篠突く雨に休む傘 オーダー復唱濡らした布巾


《偲ぶ》
もげた首つなげる手と手角に詰め押し黙る母寄りかかった子

もげた首つなげる手と手の色違いためらいごとく隠り世の哀歌

もげた首つなげる手と手選り分けず眼差し母と郷里の名前

もげた首つなげる手と手脱ぐ軍靴眼差し母と郷里の名前

短歌修行6

短歌修行6

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-15

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