詩
適当に
適当に書いているだけなのに
なんだか詩みたいなのができあがる
こんなのでいいのだろうか
何か違う気がする
もっと自分の素直な感情を吐き出すべきだ
でもそれができない
これまで長らく自己を欺いてきたので
いつもこれではないという違和感
違和感に支配されてきた人生
過去を俯瞰して二つに分ける
そればっかりやっている
どこまでいっても二元論
内と外という区分けから抜け出したいが
若い頃にあまりに自分に嘘をつきすぎたから
もうこの呪縛から脱するのは無理かもしれない
素直になろうとして素直になるふりをする
延々と続く欺瞞の螺旋
自分が抱える欺瞞と矛盾がある
世界が抱える欺瞞と矛盾と接合したい
宇宙があって自分があるのか
自分があって宇宙があるのか
もうずっとそこばかりまわっている
春
菜の花が咲いています
タンポポも咲き始めました
草むらの中から黄色いものが現れて
着る服の数も少なくなって
心身の緊張が和らいでくると
自然と気分も上向いてくるのを感じます
桜より雑草の方に目がいってしまいます
川の流れの音も強く耳に入ってくる感じがあります
カタバミの花も近所では盛んに咲いています
少し前まで木の枝の先まで見えていたのに
寒くてしかたなかったのに
季節というものはよくわからないですね
騙されているような気分になります
父
神はいなくなった
王もいなくなった
今は父もいなくさせようとしている
しかしなかなかそれは難しい
人の社会が父なしでやっていけるか
今は壮大な実験中だ
多分失敗するだろうとは思っている
父の権威がなくなって
今は母が強くなってきている
母なる大地、母なる自然、母なる海
自然をなんでも母と結びつけようとする
父はどこへ行ったのだろう
父っていったい何なのだろう
僕の父とはもう話すことはできません
これまでの人生でまじめに話をしたことは一度もありませんでした
今ではずっと天井を虚ろな目で眺めています
父はずっと働いていたはずなのに
父はずっと稼いでいたはずなのに
僕は父にはなれなかった
面接前のプチ鬱状態
面接が迫ってきているのに
まったくやる気が起きません
もう面接ばかりで疲れました
やたらに面接ばかりしてきました
履歴書から逃れられない
労働者としての生とそれ以外の生がある
今日も社会はまわっている
働きたいという感情はある
どこか適した場所があれば
それなりにやっていけるとは思う
だがそれを探すのが難しい
面接ばかりで嫌になっている
親族の視線
自己の欲望の成就
大量生産の維持
働くための理由は色々あるのだが
人のために働くというのは危険だと思う
利他はもっと怖いものだと思う
饗応夫人
母性に利他はない
父性にもない
利他の精神はブラック労働にしかないのかもしれない
奴隷だけが利他を知っている
平等が達成されるほどに利他はなくなっていく
経済学で扱われる人間たちは
皆利己的にふるまう
奴隷から利他が生まれたのだとしたら
利他がより権力を強化したのだとしたら
権力と利他のどちらが先なのか
神はもういないらしい
同一性
同一性を求めて歩んできた
同じという概念は一体何なのだろう
どうして同じと思うことができるのだろう
同一性にとりつかれてしまい
大量生産を発明してしまった
際限のない同一性の追求
因果よりも同一性の方が重要なのではないか
西欧人は因果が好きだが
日本人も因果を好む必要があるのだろうか
原因と結果がどうとかいう前に
同一性を問う方がいいのかもしれない
生命の世界は同じであふれている
多様性だけで説明してしまうのは
やっぱりどこかうさんくさい
スーパーで買い物をしていると
知らない間に妄想に耽って
よからぬことを考えてしまい
いつの間にか独りで笑っていたりして
あたりの人に気持ち悪がられます
懐石
適当に書きましょう
言葉に心をこめてはいけません
できるだけ適当に書きましょう
流れるように書いていきましょう
真理をつかもうなんて思ってはいけません
所詮は言葉なんです
言葉に重さも軽さもありません
単なる道具です
言葉は言葉でしかない
言葉に思いを託すと失敗する
普段抱いている感情を
すっと差し出すように
苦心して作りあげた形跡などはまったく見せずに
ただきれいな見栄えだけが残されるように
生活
生活を素朴に描写するみたいなことができない
生活に興味がないのだろう
生活を軽視しているのかもしれない
生活をすると疲れてしまう
だから生活をやり抜いている人は尊いと思う
でも私は生活に煩わされたくない
私は生活嫌いの現代人
私みたいな人間が社会の資源を食いつぶす
わかっているけれど特性は変えられない
もう私みたいな人間はマジョリティかもしれない
生活をやり抜いている人を
間接的にこき使っているのが現状かもしれない
今日もだらだらしているけれど
どこかに罪悪感はある
でも私の特性はしかたがない
今日もそうして居直っている
いつかツケを払わされるのだろうか
少しずつ水位が上がってきていることは自覚している
でももう少しだけ夢を見ていたい
夏
毎日暑いですね
もしかしたらこのうだるような暑さの
原因の一つはクーラーとアスファルトではないかと
若干思ったりしています
それでもずっと家の中は耐えられないので
外に出てしまいます
やっぱり冬よりは夏の方が好きです
濃い緑に囲まれて道を歩くのは楽しい
暑苦しい叫び声が鳴り響く
命を燃やし尽くすために叫んだことが
これまでの人生であっただろうか
長い間日のあたらない場所で生きてきて
ようやく日の光を浴びたと思ったら
あとは馬鹿みたいに叫んでいるだけ
そうして用がすめば朽ち果てていく
そういう生き方の方がいいのでしょうか
比喩
自己の分裂を癒すために比喩がある
比喩は治癒をもたらすもの
比喩によって容易につながらないものを
つなげることができる
こうして自己の分裂も
少し統合されたような錯覚を味わえる
比喩は統合を促す
比喩の力はつなげることで癒すことにある
私の中には深刻な分断がある
分断が私を積極的で消極的な人間にした
分断が私を外交的で内向的な人間にした
分断のせいで言葉遊びが巧みになってしまった
比喩で癒すことでこの分断を終わらせたい
詩