平均的な人間

 私は確かに攻撃的なところもあるし、どぎつい表現をしてしまうところもあるけれど、そこまで攻撃的な批判をしてきたことはないと思っている。自分の思い込みかもしれないが、他人を批判するときは慎重にしていたと思う。できるだけ自己を省みて批判するようにしていた。それでもあの人たちは、自分のことを棚に上げていくらでも攻撃してくるから疲れてしまった。

 何を言ってもいいと思っている。自分たちが疎外者だと思っているのだろう。平均的な社会から疎外された異端の者だから、凡庸な俗人たちが作りあげる愚鈍で見るべきものが何もない社会には何を言ってもいいと思っている。徹底的に叩きのめにして恥ずべきものにして、無に帰してやればいいと思っている。俗人は透明人間か何かで、そこから外れたものたちだけが神聖なのだと思っている。あまりにもひどいと思う。平均的な人間はいくらでも叩きのめにしてつるし上げればいいと思っている。串刺しにでもすればいいと思っている。そういう人たちがなにか文学とか哲学とか古典とかについて語っていた。自分は疎外者だという自負がゆるぎない自信を与えるらしい。

 死が一番大事らしい。俗人はどうして自分が死ぬことをわかっていないのだろう、と言って嘆いてみせる。日々の生活に懸命に生きている人を、そんなに簡単に嘲笑していいものだろうか。そのような態度で小説など書けるのだろうか。実際あなたの書く小説は良くないと思う。批評は優れているところもあるのだろうけれど。俗人は石ころか何かだと思っている。俗人に疎外された天才という構図があなたの頭の中に深く刻まれているのだろう。社会がそんなに単純なわけないだろう。社会を見る気も、人を見る気もないのなら、わざわざ小説なんて書く必要ないじゃないか。これまで通り、批評だけやってればいいだろう。天才とは何かとか、死の絶対性とか。

あなたが煉獄をくぐればいいじゃないか。自分のことを棚にあげて批判してばっかりじゃないか。

平均的な人間

平均的な人間

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-12

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