『やさしいまたたき。』
きみはともだち。1
「いつか芽が出るよ。
また生まれておいで。」
「あとで会おう。」
「朝ごはんを簡単にでも作ると満足感があって素敵。
1日が始まるけど、この1日は世界中の誰にでも始まるものではない。
それが、きみが生きているという不思議。」
「8割は気にしなくていい。
2割のために生きてみたら。」
「よくがんばったね。」
「わすれものにきをつけて、むりをしないでね。」
「来週はゆっくりいこう。」
「ちょっとくらいしあわせだって、誰も困らない。
わらってみたら。」
「したたかであれ。いろいろとべんりだから。」
「あなたがきらいなものは、ずっときらいなままでも、さしてこまらないとおもう。
だっていきがすえるもの。」
2.
「他者から与えられた正解であるという情報のひとつを、自分の頭でいちから捻り出したと感じている人びとがきみの目の前にたくさんいるだろ。
きみは彼らの、他者のちからにより叶えられたいくつもの事柄を彼ら自身のちからですべて成し遂げたと信じている姿勢を、なんだか奇妙だなと思うだろう。
きみはきみを観察し、情報をしかるべきときにあるべき人物たちに手渡し続け、タイミングを見て真摯に実験に対応した。充分だ。
きみと彼らの違いは、恥を感じるか感じないかだ。
元気になったら笑ってみるんだね。
誰も、とめないよ。」
「アイスコーヒーに氷を入れて、モカアイスクリームを添えて。好きないろのストローで飲もうよ。
ここは地獄。
地獄で素敵な工夫をする。わたしらしい。」
「青空に文句をつけようなんて誰も思わないのに、天気みたいな他人には何か一言言いたくなるなんて。
人間は実に不思議だなと思っている。
こんなにひとりぼっちな時代で、だからこそつながりに飢えている群れの動物が、僕らなんだな。
知能は繋がらない。
知は、受け継ぐことができる。
この頭脳は、自分のためだけにあるんじゃないよ。きっと」
「曇り空がワンタップで青空に桜咲かすスマートフォンをあなたはもっている。
泳ぐ夜の尾鰭をつかまえられるかも。
現実的ではなくてもそれがあなたのひそむまち。」
「にんげんだけれど、たまにねこになっても、たまにおやつをくれるせかいがいい。
にんげんだけれど、たまにいぬになっても、ときどきほめてくれるせかいがいい。
ねこもいぬも、ときおりにんげんみたいな、ものうげなまなざしをむける、せかいがいい。
せかいはこうでなければではなく、こうだったらいいなでまわっているとしんじられる、せかいがいい。」
『やさしいまたたき。』