『あの日の灰』
真夏に降る雪のように
それは気まずいまま降り積もる
『あの日の灰』
貴方の背中におぶられて
両手に持ったヒールが揺れていた
子供の頃みたいと笑えば
ちょっとだけ怒られて
愛すべき日常はいつか終わるから
忘れたくなくてしがみつく
スーツが皺になるのも気にせずに
貴方は優しいままだから
大人になると何をするにも怖いね
貴方の髪に白いものが増える度
怖くて仕方なくなるの
貴方が気にしていなくても怖い
どこにも行かないでと泣いたのも
遠い昔の話になったけど
今でも思うのはただ傍に居たかった
そんな囁やかな願いすら叶わないなんて
人が必ず行き着く場所では
背の高かった貴方も小さくなって
燃える炎に身を投げたいくらい
嘆いてもまた日常はやってくる
どんな生き方をすればいいの
失ってからの未来が見えない
そう言って泣き暮らしても
結局いつかは顔を上げるしかない
過去になってく貴方を見送って
アタシに残った少女を捨てる
ここからは自分の足で歩くのだから
あんな風におぶられることはもうない
「全部がいつかは灰になるのよ」
『あの日の灰』