『脳内亡命』
喧騒の嵐を横目に
プールの底に沈めば平和な孤独
『脳内亡命』
静けさは確かに好ましいけど
アタシはどんな時も思考の海に
この身を沈められるから
逃げる方法は確保してるの
人混みでもひとりぼっち
例えふたりで居たって
そういう自ら選んだ孤独は
いつもアタシを宥めてくれる
生温い水に全身を沈めて
今だけ溺死死体の振りをする
誰も気が付かないならもう
存在の死と同じだから
大事なものは全部宝箱の中
学校にも何処にも持ち出さず
アタシだけの秘密として
しっかり鍵をかけてるの
楽しいことも悲しいことも
回線を切ってしまえば遠い物語
誰にも干渉されない世界で
アタシはアタシを守りたい
音も光もあやふやになって
流れに身を任せて初めて
本当の生についてアタシは
考えを巡らせることができる
まだ生きててもいい
終わりはいつだって突然だから
少し逃げて安堵して
浮き上がればいつもの真昼
「誰も知ることのないヒトリのアタシ」
『脳内亡命』