とある雪だるまについて

彼の話す世界の歴史

一人、いや一つ、不思議な雪だるまがいた。
道ゆく人に襲いもせず、優しくもせず、何もせず、ただ突っ立ってるだけ。それだとただの雪だるまだが、彼はしっかり自我を持ち、魂を宿していた。
なぜ過去形か?それは、時間軸がこの世界とは違うから。未来でも過去でもないが、非現実的ではある。

私は、神のちょーーっとしたミスでこの雪だるまのいる異世界に飛ばされた。そのミスは…あとで話そう。
その世界で私は、いわゆる"冒険者"というのをやっていた。そう、ただただ冒険してただけだ。
そしてたどり着いたのが"ケンボーの雪原"。名前の由来は、多くの冒険(ぼーけん)者が挑んだから。この国の地名は本当にふざけた名前ばかりだ。
とにかく、その雪原に彼がいた。彼は皆に"雪怠man(ゆきだるまん)"と呼ばれていた。そして、私は彼と話をした。
彼はこう言った。
「世界は一度破滅へ向かった。滅びかけたのだ。しかし、ワレワレは生きている。世界は、救われた。」
そして長ったらしい説明を1分ほどした。

正直、そんなワケあるかい、と思った。でも、彼は真剣だった。まるでその目で世界が滅びる様を見たようだった。
彼が言うには、とある冒険者が、滅びかけた世界を救ったようだが、その冒険者は国がどれだけ調べても、何の情報も出てこなかったらしい。だが、国はそのような検索履歴はないと言っている。雪だるまの作り話か、国家視点では手遅れだったのか。

雪怠manは、きっと今もどこかのクリスマスツリーのてっぺんに刺さっているだろう。



                 つづく

とある雪だるまについて

とある雪だるまについて

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted