『愛されているふりが上手いだけ』
貴方が差し出した
欲望という名のカクテルを
一気に煽れば酩酊の夜半前
『愛されているふりが上手いだけ』
知らないことが少しずつ
少なくなる度に思うのは
知りたいという感情さえ
欲望と似たようなものだという事実
吐き出した熱の代わりに求めても
未だ冷たい貴方の心の内
切り売りしたアタシに一番似合う
安い花束で早く誤魔化して
指が唇が偽りながらも丁寧に
一枚一枚剥がしていく手順
脱ぐものなんてもう無いのに
それでも貴方は許してくれない
例えば他の誰かを仄めかしたり
最後の手段でアタシのものにしたり
実現しない空想で慰めても
仄暗い衝動を宥める術を知らない
全部飲み込んで幻想に生きるなら
それはそれで楽な方法よ
心の在り処なんて知らない方が
美しく笑えるはずだから
貴方の隣で腕を組み微笑んで
当てにならない誰かの批評を聞く
長いドレスの裾が揺れる度
氷の棘が心臓に深く刺さるけど
高価な花束を抱いて笑うの
似合わないことは承知の上
覚悟なんてとっくにしていた
それでも選んだ道なのだから
薬指のリングが煌めいて
泣きそうなほど綺麗でしょ
だけど涙は捨ててきたの
貴方を手に入れる為の利害得失
「貴方の幸せなんて知らないわ」
『愛されているふりが上手いだけ』