zoku勇者 ドラクエⅨ編 72

vs・ガナサダイ

「……分かった、俺もこの一撃に全てを掛けてやらあ!」

「ジャミル……」

「そのままじゃ、だ、駄目だよお!……オイラ、後1回分、回復魔法
使えるから、ベホイムをっ!」

「……ダウド、余計な事すんなっ!俺は全然平気だっ!」

傷だらけのジャミルを心配し、ダウドは回復魔法を唱えようとするが、
ジャミルは拒否。既にボロボロなのはギュメイも同じ……。ジャミルは
最後まで対等に勝負をしたかった。

「……もし、お前が先に力尽き、我が勝った暁には……、平等に
仲間の首、命も貰う、それでもいいのだな?」

「そ、それは……」

流石にそれは直ぐにジャミルにも答えるのは無理だった。
項垂れそうになっていると、アルベルトとアイシャが背中を
押してくれた。

「僕らはいつもジャミルと共に、覚悟はある……」

「ええ、私も……」

「お前ら……」

「……ぎょえええ~~っ!?」

「……ちょっと待ってーーッ!これっ、ジャミ公が失敗したら
マジで世界は終わりだよっ!アンタ、よ~く考えなさいよッッ!
デブ座布団はどーすんのよッッ……!!」

「……モォ~ン……」

「……サンディィ~、そ、そーだよおお~……」

飛び出して、必死で反対してくれるサンディにダウドは一安心。だが、
もしも一騎打ちを拒否した処で、4人はどうにも出来ない状態……。
もし、4人でこのままギュメイを総掛かりで倒してもモヤモヤと
シコリが残るだけである……。だから、ジャミルは……。

「大丈夫だ、俺、絶対勝つから……、アンタには負けねえ、皆、俺を
信じてくれ、頼む、サンディ、モンも……」

ジャミルは力強い目でギュメイの方を見る。一度だけチャンスを
与えてくれた誇り高き将軍、ギュメイの心遣いも無駄にしたく
なかった。

「うん、モン、ず~っとず~っと信じてるモン、ジャミル、ちゃんと
おじちゃんとの勝負に勝って、またモンをみんなと一緒に連れてって、
モン……」

「任せとけってのっ!」

「……ったくもう~っ!マジで信じらんないっつーのっ!極度を超えた
バカだよっ!アンタってっ!……知らないわよ、もう、……何回こんな
コト言わせんの……」

サンディも覚悟を決め、その場でジャミルとギュメイの真っ向勝負を
見守る事に……。

「……行くぞ、どちらが倒れても恨み言は無しだ……、帝国三将が一人、
ギュメイ……、お前との最後の勝負、……いざ、参る!!」

「……俺も行くぞーーっ!ギュメイーーっ!だああーーっ!!」

……二つの風が同時に走る……。一体目の前で何が起きているのか、
それは仲間達にも分からなかった。ぶつかり合う風と風……。
それぞれの剣が相手を互いに斬る。……風が止んだ。ジャミルも
ギュメイも、倒れたのはほぼ同時だった……。ギュメイは倒れると
同時に、自分の長剣を地面に落とす……。

「っ、ううう~……」

「……グ、グハァァ……ッ!!」

「ジャミル、ジャミルっ、しっかりしてっ!」

「……モン~!」

アイシャとモンは急いでジャミルに駆け寄り、呼吸を確かめる。辛うじて
息はしているが、大出血で瀕死の状態だった。そして、それはギュメイも
同じだったが……。

「……み、見事だった……、我の負けを認めよう……、さあ、早く奴の
回復をしてやれ……」

「ギュメイさん……」

「何をしている、戦いに情けは無用、我は敗北したのだ、早うせぬか!……」

涙目になり心配するアイシャの肩をアルベルトが叩く。そして、ダウドに
合図をした。

「ダウド、ジャミルに……、頼む……」

「ん、分かったよお~……」

ダウドは急いでジャミルにベホイムを唱えた。先程まで青ざめていた
顔がみるみる血色が良くなって行く……。

「はあ~、んとにっ、もう~、何でアタシ、こんな奴のパートナー
なんか引き受けちゃったんだろっ、……ア~ホ、バカバカバカっ!」

サンディはジャミルが落ち着いたのを見ると、発光体になり、また
ジャミルの中に入って行く。……一方、モンは瀕死のままのギュメイを
じっと見守っていた……。

「おじちゃん……」

「モン、大丈夫だよ、特薬草を使ってみよう、さあ……」

「……余計な事はするなと言っている!!」

「……うぎゃあーーーっ!?」

ギュメイに怒鳴られ、ダウドは慌ててアルベルトの後ろに隠れる……。
無理をして大声を出した為、ギュメイは再び吐血した……。

「我は……、敗北者だ……、このまま生きて恥を晒すなら……、潔く
散るのが武人の定めだ……」

……誰もギュメイを止められなかった。彼は帝国三将、皇帝を守り、
帝国の為に例え命を捨てても最後まで戦う事が定めなのだから……。

「……ジャミルとやら……、お前の剣裁き、実に……、見事であった……」

「お、おっさん……」

ジャミルはどうにか意識を取り戻し、ギュメイの方を見た。ギュメイの
身体が微かに淡くなっている。最後の時が近づいて来ていた。

「……あの方の他に我が剣を撃ち破る者がいようとは……、最期に
お前の様な敵と戦えた事、誇りに思う……、皇帝陛下……、最後まで
お仕え出来ぬ不忠をどうかお許し下さい……、ですが、帝国は必ず勝利を
治めると……、そう、信じております……」

「俺も……、あんたみたいなのと勝負出来て……、嬉しかったよ、おっさん、
マジで頭にくる程強かったぜ……」

「……何れ貴様らが皇帝陛下に敗北し、あの世に来る事があればまた、
勝負してやろう……、ふ、待っているぞ、それから……、モン……」

「モン~……、モン、本当は……、おじちゃんと、友達に……、
なか、よしに……」

「お前の主達を想う気持ち、これからも大切にしろ……、では、
……さら、ば、だ……」

「……」

ギュメイはジャミル達が見守る中、静かに息を引き取る。彼は最後まで
帝国の武人として戦い、大切な主を信じ、旅立って行ったのだった。

「……モォ~ン、モォ~ン……」

その場にはモンの悲しそうな泣き声が響き渡る……。こうして、
帝国三将軍は全員破れ、残りは皇帝ガナサダイのみとなった……。

「やったネっ!色々あって、も~、どーなるコトかと思ったけどサ、
何だかんだで、後は皇帝倒すだけじゃん!」

ジャミル達は一度、HPとMPの全回復の為、魔法陣の有る部屋まで
一旦戻り、身体を休めていた。……モンはあれからまた、すっかり
元気を無くしていた。

「簡単に言うなよな、たく、このガングロはよ……、モン……」

「モン~……」

モンはしょげた顔のまま、ジャミルの方を見る。それを見たジャミルは
又やるせなくなる……。

「ほれ、最近やってねえだろ、オメー、悲しい時は太鼓叩くんだって、
自分で言ったじゃんか……」

「……げっ!?」

ジャミルはキャンディーの棒をモンに渡す。警戒するダウドの肩を
アルベルトが、モンを元気づける為なんだからさ……、と、軽く
叩いた。

「そうね、あんまり下ネタ太鼓は関心出来ないけど、モンちゃんが
元気になるなら……」

「とほほ~、しょうがないなあ~、ほら、モン、頭の上、いいよお~……」

ダウドは自分自身の頭の上を指さし、乗っていいよの合図。モンは
目を輝かせた。

「みんな、ありがとモン、モン、もうクヨクヨしないモン♪また一緒に
みんなと頑張るモン!」

「よしっ、やれっ、モン!遠慮しなくていいからな!思い切り叩けよ!」

「人事だと思ってゆ~なああっ!……とほほのほ~……」

……炸裂するモンの下ネタ太鼓……。ジャミル達は暫くの間、それを黙って
聞いていたのだった……。

「……モン、大丈夫か?落ち着いたか?」

「モォ~ン、うん、おじちゃんは敵だったけど、でも、おじちゃんが
教えてくれた事、モン、大事にしたいモン、モンは皆が大好き、だから、
ずっとジャミル達と一緒、これからも何処までも付いてくモン!」

「そうか……」

ジャミルはその言葉に安心する。モンにとって、ジャミル達は
主ではない。大切な友達。それはジャミル達にとっても同じで、
決して堅苦しい関係などでなく、種族を超えた絆で結ばれた
仲間なのだから……。

「さあ、いよいよ大詰めの大ボスだ、行こうぜ、ギュメイが命懸けで
死守したさっきの扉の所だ、戻ろう……」

「!!わわわ、ちょっと待ってええ~!オイラの髪、乱れちゃった
んだよお~!だから直すまで時間ちょーだいっ!!」

またこのヘタレは……、時間を延ばそうとしてんのかと思ったが、
モンの涙の下ネタ太鼓のお陰で、ダウドのオールバックヘア
スタイルはいつもの如くぐちゃぐちゃになっていた。ま、いいかと
ジャミルは思いもう少し待っていてやる事にした。以外と綺麗好きで
身嗜みにはうるさいので困るのだが。

「ゆっくり直しとけよ、じゃあもう少し休むか……」

「ありがとう~っ!ジャミルううーーっ!」

「やれやれ……」

取りあえず……、ダウドのヘアスタイルが決まるまで、もう少し
この安全な部屋で休んで行く事にした。どうあってもこの先に
待ち受けているのは、食うか食われるのか戦いしかない……。
休んでいる間に、心構えへと覚悟を決めなければならなかった。

「ねえ、こんな話知ってる?タクシーのお話……」

突然アイシャも突拍子もない話をし出す。一体何なんだと思ったが。

「夜中にお客さんをタクシーに乗せたらね……」

「ああ、お客さんがいきなり消えててシートがびっしょりになって
いたって話かい?」

「違うの、……後ろの座席にモンちゃんが乗っていたんですって!」

「モン~?モンが乗ってたのモン?」

「はあ~?んだよ、その話……、オメー、無茶苦茶作るんじゃねえよ!」

「……怖いよお!」

其処へ、ヘアスタイルが整ったダウドが話に乱入してくる。何が怖ェんだ、
何が……。と、ジャミ公は思った。

「……だってそうじゃないかあ!夜中にいきなりカオス顔のモンが
タクシーの後ろの席に乗ってたらさあ!」

「た、確かに……、想像すると怖いかも……」

アルベルトがそう言い、ジャミルも想像してみる。……確かに。怖いかも
……しれない……。

「……こんな顔……、モン!?」

「……うぎゃあーーっ!?」

(何やってんの、ヘタレはっ!ってか、デブ座布団、ホントバカっ!)

「「あはははっ!」」

笑い合う仲間達。どうしようもねえなあとジャミルは思う。だが、
皆と友に一緒に過ごす時間。例えどんなにアホな話でも大切に
守らなければならない時。……ボンにも見せてやりたかった、
自由で幸せな時間。此処を出れば、また始まる戦いの時。
……だから……。

「皆、この帝国との戦い、必ずケリを付けようぜ、何がなんでもな……」

「そうだね、必ず皆で勝って平和な世界を取り戻すんだ!」

「絶対勝とうね!」

「……ううう~、う、うん……」

「モォ~ン!」

(ま、アタシは寝てるしかどうしようも出来ないケド、オーエンは
してるからネ♪)

ジャミル、アルベルト、アイシャ、ダウド、モン、サンディ……。
仲間達は帝国との決戦前に硬くもう一度約束を刻む……。必ず
この戦いに終止符を打ち、天使界と人間界を救うのだと。そして
向かうは暗黒皇帝ガナサダイが待つ、部屋の扉の前……。其処で
衝撃の光景、……彼の真相を知る事に……。

「さあ……、イザヤールよ、その女神の果実を早く此方によこすのだ……」

「はっ……」

「イ、 イザヤールっ!?」

扉を開け、其処で見た物……。いかにもな悪そうなツラ、容姿の
皇帝らしき男の前で跪くイザヤールの姿が……。この男が全ての
諸悪の根源、暗黒皇帝ガナサダイで間違いはないのだろう。しかも
イザヤールは女神の果実をガナサダイに献上しようとしている……。
しかし、オムイの話では、イザヤールは確かに本物の女神の果実を
天使界に届けたと。ジャミル達もそれは確認済み、だからこそ、世界樹と
女神は復活し、此処まで来れたのだが……。しかし今は、一体何を考えて
いるのか分からないイザヤールを止めなくてはならない……。

「……待てっ!イザヤールっ!」

「……ジャミル?……お前達が何故此処に……、くっ、邪魔をするなっ!」

「うあーーっ!?」

「「ジャミルっ!?」」

(ジャミ公っ!!)

イザヤールは衝撃波をジャミルに向け放つ……。仲間達は慌てて
ジャミルの様子を確認するが……。

「だ、大丈夫だ、掠り傷だ……」

「モォ~ン……」

「イザヤールっ!何をするんだっ!」

「もう絶対許さないわよっ!」

「……いい加減にしろおおっ!」

「お前達は其処で黙って見ていれば良いのだっ!……は、早く……、
事を済ませんと……、……よかろう、暗黒皇帝ガナサダイ……、
これが欲しければくれてやる、だがその代わりにお前の命を貰い
受けるっ!!」

「……イザヤール……?」

「それが貴様の本心か、……成程、差詰めその果実も偽物といった
処か、知れた事よ……」

「女神の果実は天使界の宝、帝国などに売り渡す物か!……こうして
お前と直接会う為、天使界を……、仲間を……、弟子を……裏切った
フリをしていただけだ……」

「……な、何だと……?」

……此処に来て、4人はイザヤールの真意を知る……。あの時、
イザヤールが箱船に現れ、皆を襲い、傷つけた事も、裏切りも
全てはこの時の為だったと……。だが、ジャミルは納得いかず……。
腑に落ちない事は沢山有り、全てイザヤールに問い質さないと気が
済まなかった。……それはアルベルトも同じ、あの時、アーレー山で
自分を帝国へと連れて行き、皆と又引き離そうとした真意も……。
ちゃんと1から聞かないと何から何まで納得出来ず我慢出来ない
事ばかりだった。しかし……。

「よくもこのガナサダイをたかばってくれた物、その罪万死に値すると知れ……」

「此処でお前を倒し、……あの方を救い出させて貰うっ!」

「あの方……?あ、あっ!?」

イザヤールはガナサダイへ向かい思い切り斬り掛かる……。だが、
擦りもびくともしない様だった……。

「くっ……!」

「……イザヤールっ!よせーーっ!!」

「貴様の力はこの程度か……、失望させてくれる……、これでは
バルボロスのエサにした所で大した足しにもならんな、……役立たずが、
無用者には死をくれてやろう!」

「ぐわぁああーーーーっっ!!!」

「……イ、イザヤールーーーっ!!」

「……」

イザヤールはその場にゆっくりと倒れ、崩れ落ちる。慌てて此方に
駆け寄って来る、不毛の弟子の姿をその目に焼き付けながら……。

「イザヤール、大丈夫か?しっかりしろよ……」

「……ジャミル、お前は……」

イザヤールは自分の目の前にいる小さな細身の少年を見つめた。
帝国に関しては、天使界や仲間を裏切ってでも自分のやり方で……、
……するつもりだった。だが、やはりどうしてもジャミルは
許せなかった。お前はどうしようも無い、何時まで立っても、
何処までも甘い不毛の弟子だと……。

「ダウド、頼む、イザヤールに……」

「えっ?……う、うん……」

やはりダウドも戸惑いの色を隠せず……。幾らイザヤールの真意が
分かり掛けたとは言え、イザヤールには強引に酷い目に遭わされている。
特にトラウマになっているダウドが戸惑うのは当たり前である……。

「……よ、余計な事はするな……」

「イザヤール……」

「今のお前達には少しのMPも無駄にする事は許されない筈だ、
早く行け、そして……皇帝を倒せ……」

イザヤールは回復を拒否する。……ジャミ公はジャミ公で、
頑固なハゲ師匠に又、ぷっつん切れそうになった……。

「……ほう?其処の死に損ない以外にもネズミが入り込んでいたとは、
ギュメイもゲルニックも倒されたという訳か……、ならば余も本気を
出さねばな、掛って来るが良いぞ、ドブネズミ共、魔帝国ガナンの
皇帝が威光その身に刻んでくれようぞ!」

「……ガナサダイ……」

目の前には迫り来る諸悪の根源、暗黒皇帝ガナサダイ……。こいつを
倒せば全てが終わりになる、迷っている暇は無かった…。

「……分かった、モン、サンディ、イザヤールを頼む……」

「モン、分かったモン……」

「アタシも?……ハア、どうせこうなるんだから、仕方ないか、ねえ
アンタ、変な事したら、このハンマーで殴るかんねっ!大人しく
しててよッ!」

「……お、お前達は……、今の自分には何も出来ん、こうしているのみだ……」

ジャミルはモンとサンディに自分達の戦いが済むまでイザヤールの
介護を任せる。イザヤールはうっすらとモンの顔を見上げ不思議
そうな顔をした。このモーモンは確か、箱船で自分が斬り付けた筈の
モンスターだと。こんなモンスターまでが、彼を慕っている。やはり……。

「アンタにまだ倒れて貰っちゃ困るんだよ、ちゃんと説明して
貰いたい事もあるしよ、それまでちゃんと生きてろよ、行くぞっ、
皆っ!!」

「……ジャミル……、お前は……」


「「了解っ!!」」


ジャミルの合図で一斉にガナサダイへと全員で総攻撃で飛び掛かる……。
これで、これで全てが終わりになる、終わりにするんだと……。
イザヤールは目を細めながら、不毛の弟子達の戦いを静かに見守って
いた。あのどうしようもない、アホ突貫天使小僧が……。本当に強く
なったのだなと……。

「どうりで……、奴はこの私を今まで困らせた訳だ……」

「ちょ、アンタ、何ニヤニヤ笑ってんのよ、何か企んでんじゃ
ないでーしょネっ!?」

「これ、あげるモン……」

「……?」

イザヤールの頭に、何かぞわぞわして異様にチクチクする物が
置かれた。それは……。

「薬草モン、少しは傷治しておかないと、ジャミルが悲しむモン……」

モンがちょんとイザヤールのハゲ頭に薬草を置いたのだった。
その光景は……。まるでカツラ……。少し、頭に毛が生えた
様にも見えた……。

「……済まぬ……、不毛の弟子のモンスターよ……」

「……モォ~ン……、みんな……」

「やあっ!」

「……それでも攻撃しているつもりか?……死ねっ!」

ガナサダイは自身の持っている杖から斬り付けようとして来た
アルベルトに向けメラゾーマを放出。続けて4人全員へと
真空派を繰り出す。ダウドは慌てて直ぐにベホマラーを唱えた。
アイシャは只管バイキルトでジャミルとアルベルト、両者の
攻撃面のサポートに徹していた。

「……そろそろ消えて貰おう、お前達は我が帝国には相応しくない、
目障りだ……、死ね……」

「ざけてんなっ!……消えるのはオメーの方だっ!」

ジャミルはドラゴンキラーを強く構え直す。絶対にこんな奴が
支配する暗黒の世界はぶち壊してやる、ボンや散っていった皆が
安心して又生まれ変われる平和な世界を作るんだと……。その為には
絶対に帝国を崩壊させなければ……。

「アル、行けそうか?此処は俺とハヤブサ切りの連携で一気に
方を付けるんだ……」

「ああ、もたもたしていられないからね、同時に攻めよう!」

「……何をごちゃごちゃと……、むっ!?」

ジャミルとアルベルト、ドラゴンキラーを抱えた二人が同時に
ガナサダイへと突っ込んで来る……。素早い動きでハヤブサ
切りの連打猛攻撃をガナサダイへとお見舞いする。

「……お、おのれえーーっ!」

「……アッ!?」

「アルっ!」

アルベルト、ガナサダイの魔法により、吹っ飛ばされ壁に叩き付けられる。
ジャミルは急いで救出に向かおうとするが、アルベルトは、……僕の事は
いいからと、ジャミルに伝えるのだった。

「ジャミル、アルの事は大丈夫よ!」

「オイラ達がいるよお!」

「ああっ、ガナサダイっ!覚悟ォォーーっ!!」

床を蹴りジャミルが再びガナサダイへ突進。アイシャも再びバイキルトを
ジャミルへ……。ガナサダイもメラゾーマをジャミルへと放つが、ジャミルは
ドラゴンキラーで魔法を弾く。

「……お前の時代はもう終わりなんだよーーっ!!」

ジャミルの一撃、ガナサダイの胸を貫く……。ガナサダイは刺された
胸を押さえ、悔しそうにその場にしゃがみ込んだ……。

「く、くそっ……、ゴフッ……」

「やったじゃん、ジャミルっ!」

「モンーーっ!」

「……ジャミルーーっ!!」

サンディもモンもジャミルに駆け寄る。仲間達も……。遂に暗黒皇帝は
倒れ、帝国もこれで滅び、何もかも全てが終わると思っていた。その場に
いる皆は……。ずっと見守っていたイザヤールもこれには驚くばかり
だった。本当にあの不毛の弟子がガナサダイを倒したのかと……。嫌、
彼はもう不毛などではない、一人前の……。

「さあ、イザヤール、真面目に傷の手当てを受けてくれ、あんたの話は
中途半端が多いんだ、ちゃんと話して貰わねえと納得出来ねえ、いいか?」

「イザヤール……、さん、お願いします、僕も聞きたい、あの時の
アーレー山でのあなたの真意を……」

「ああ……、分かっている、……!?」

アルベルトにも見つめられ、イザヤールは静かにちゃんと全てを
話す覚悟を決めた。アイシャもダウドももう警戒はしていない。
だが、次の瞬間……。

「余を……、魔帝国ガナンが皇帝を此処まで愚弄するとは……、
お前達はどれ程の大罪を犯したのか……分かっているのか……?
……よかろう、ならば我が全力を持ってその罪を購わせてくれようぞ……」

「ジャミル……、まだだ、まだ奴は死んでいない、終わっていないぞっ!」

「……あ、ああっ!?んなっ!!」

背後から聞こえる恨みの籠もった呻き声……、そしてイザヤールの叫びに
全員が後ろを振り返る。倒れた筈のガナサダイがゆっくりと立ち上がる……。
そして変貌を遂げようとしている……!

「いやーーっ!!……お約束発動だあーーっ!!」

「ダウドっ!慌てちゃダメだっ!落ち着いてっ!!」

「……モ、モォ~~ンっ!」

「モンちゃん、大丈夫よっ!」

アルベルトはえらやっちゃ状態になってしまったダウドを宥め、
アイシャはモンを落ち着かせようと、自分の胸に引き寄せる……。

「ガァァァゴォォォ……ォォォ……」

……ガナサダイは本来の姿である、第二体型へと姿を変える……。
顔は既に白骨化し、下半身にはドラゴンの様な翼が付いており、
右手には持っていた杖が変化した斧の様な武器を装備、そして、
左手に盾装備……。疲れているジャミル冗談じゃねえと歯がみ
する……。今までの戦いは前座だったのかよと……。だが、
此処で引く訳にはいかないのだから……。

「……どうした?もうそれで終わりか?やはり大口を叩いた
だけか……、ドブネズメが……」

「……う、じょ、冗談じゃねえ……、くっ……」

ジャミル達はガナサダイの手により、謎の異空間ゾーンへ送られていた。
一体何処の場所なのかも分からない場で苦戦し、戸惑い、本気を出した
ガナサダイにあっと言う間に追い詰められていた。これまでの連続
バトルで疲れも出始めていた所為も有り……。鬼畜なガナサダイの
容赦ない攻撃に全滅寸前だった。回復役のダウドは集中攻撃され
既に一番最初に力尽きてしまっており、アルベルト、アイシャも又、
共にズタズタに傷つけられ、最悪の瀕死の状態に……。

「……ジャミ、ル……、こんな……、あれが暗黒皇帝の真の力だと……」

「モォ~ン、みんな……、いや、いやモン……」

「いやーーっ!?コレってマジヤバイじゃん!も、もうホントに
ダメなん?……ヤダ、ヤダよ……、……これ以上話真面目にしないで
よーーッ!……ああーーんっ!!」

見守っていたサンディは地べたに座り込み絶叫……。そして、
マポレーナへの進化の力を自ら拒否したモンに再び襲い掛る
痛烈な後悔……。だがモンは、皆の危機に黙っていられず、
少しでも何とか出来る事をしようと……、予備の回復薬等が
入った袋を持って飛び出そうとする……。

「待て、モンスターよ!……嫌、モンだったか?……此処は
私が行こう……」

「……イザヤールのおじちゃん?……だ、ダメモンっ!まだ、怪我が
治ってないんだモン!」

「私の事なら大丈夫だ、お前にもしもの事が有ればあいつが悲しむ……、
さあ、その袋を此方に……、せめて、……最後ぐらいはあいつへの
償いに……」

「モ、モン……?」

モンはイザヤールが呟いた言葉の最後に何か嫌な予感を感じた……。
だが、このまま自分が行ってもあの状況ではジャミル達を助ける
事はとても無理……、やはり、イザヤールにお願いするしかないと……。

「おじちゃん、お願い……、モン……、ジャミル達を……」

モンは小さな震える手で袋を渡す。イザヤールはモンから袋を受け取ると、
モンに向かって笑みを見せた。

「任されよ……、あの時、箱船にてお前を斬り付けた事……、
今更ながら申し訳なく思っている、ジャミル達を裏切り、
傷つけた事を……、平常心を保とうとしたが、心の
何処かで迷い、……戸惑い、毎日後悔しない日は無かった、
済まなかった……、もう、こんなになってしまっては全てが
遅いのかも知れないが……」

「……おじちゃん、イザヤール……」

イザヤールは翼を広げるとガナサダイに向かって真っ直ぐに
飛んで行く……。モンは、どうか、どうか、早くもうこんな
悲しい戦いは終わって……、と、硬く目を瞑る……。ジャミル達、
……イザヤールの無事を祈りながら……。隣で聞こえるサンディの
泣き声を耳にしたままで……。

「小僧……、もう抵抗も出来ない様だな……」

「……うるせーよ、クソっ!……ああっ!?」

「まだその減らず口は叩ける様だな……」

ガナサダイはジャミルの前髪を乱暴に掴むと身体を無理矢理
起こさせ、立たせる……。そして、手にした錫杖で頭を思い切り
殴打。何回も何回も……。ジャミルの頭部から血が吹き出し、
流れ出た血が床に落ちた……。

「情けない、この……、帝国の皇帝とも有ろう者が……、こんな奴を
相手にしようとは、恥を掻かせおって!……死ねェェェーーーっ!!」

「う……、うううーーっ!!あ……、ぐっ……」

ガナサダイの枯れた手が今度はジャミルの首に手を掛け、締め付けて
行く。硬く首を掴んだ尖った手はジャミルの首筋も傷つける……。
ジャミルは呼吸が出来ず、気を失う。首元からも吹き出す血……。
ガナサダイは吹き出た血を小指で救って舐め、味見をした……。

「不味い血だ……、何処までも不愉快な小僧め……!!」

「……マヌーサっ!」

「……?こ、これは……、霧か……?誰だ、小賢しい……、うおっ!?」

「……ハアアアーーッ!!」

何とか駆け付けたイザヤール、まずはマヌーサで霧を起こし、
ガナサダイへ向けて衝撃波を放つ。こんな物、子供騙しにしか
ならないのは分かっているが、ガナサダイが一瞬怯んだ本の
僅かな隙を狙い、イザヤールは間一髪でジャミルを救出、
その後、倒れている仲間達も回収……。4人を両脇に抱え、
急いでその場から逃げようとする。少しでも安全な所に、
何とか一旦避難させる為……。だが、それはとても不可能に
近く……。

「うぬううっ!こしゃくなっ!イザヤールっ!この死に損ない
めェェーー!!」

「う、うおおおーっ!?……ガ、ガナサダイ……、くそっ……、
何としても……、守らねば……、も、もう少しだけ……、神よ、
私に……、時間を……」

ガナサダイはイザヤールの翼目掛け、メラゾーマを放出した。翼は黒く
焼け焦げ、イザヤールの脂汗はジャミルの頬へと落ちる。もう、飛んで
いるのも殆ど限界に近い状態であった……。

「……イザヤール……?」

「ジャミル……、済まぬ、やはりもう、私の力では……、お前達を
守り切れぬかも知れん、だが、何とか……、くうっ……」

ジャミルも痛みを抱えたまま、意識が戻る。そして、状況を理解する。
側ではイザヤールに同じく抱えられている意識の無い仲間達の姿が
あった。

「……許さぬ、……皇帝を侮辱する者は全て貴様らを纏めて全員
始末してくれようぞーーっ!!」

「……ああっ!危ないーーっ!!」

それでも外道なガナサダイはジャミル達への攻撃を止めず……。怒りの
炎のブレスを全力で放出……。イザヤールは最後の力で気力を高め、
バリアを張ると迫り来る炎から身を挺し、命懸けでジャミルを
庇うのだった。

「……うぐおおおーーーッ!!」

「イ、 イザヤ……」

イザヤールの翼が溶けて消える……。翼を失った彼は真っ逆さまに
地上に墜落していく。抱えられていたジャミル達も……。ジャミルは
落ちて行くイザヤールの姿を目にした瞬間、イザヤールが弱々しく
自分に手を差し伸べているのを見る……。それはあの時の光景と
同じだった。天使界が崩壊し、ジャミルが地上へ落下する瞬間
差し伸べられた手。あの時はその手を掴む事が出来なかった。
だが、今は……。

「……私の中に何とかまだ残っている最後の力を全てお前に託す、
勝て、ジャミル……、頼んだ……、ぞ……」

「……イザヤール……、……うわああーーっ!!」

「モ、モン……、ジャミル、みんな、イザヤール……、モンーーっ!!」

「……デ、デブ座布団っ!!」

ジャミルの絶叫と悲鳴、そして謎の光……。モンはもうどうしても
じっとしていられず、等々飛び出して行ってしまうのだった……。

「く、くくく……、やったか?等々全滅か、イザヤールも……、
ドブネズミ共も……、むっ!?」

「……まだ、終わってねえよ……」

……床には無残に落下したイザヤール、そして、重傷の仲間達……。
その中で一人、悲しみを堪え、立ち上がる者……。

「貴様……、!?」

ガナサダイは一人、立ち上がったジャミルを見、怪訝な表情をした。
彼の背中に失った筈の天使の翼が生えていた……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 72

zoku勇者 ドラクエⅨ編 72

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

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  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-14

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