『名前を捨てた朝』

沢山のサインを見逃してきたのは
優しい振りした貴方でしょ


『名前を捨てた朝』


愛って呪いと一緒だと
子供の頃から思ってた
貴方から貰えたのはそういう
一歩間違えれば刃物になるものだけ

暖かい日差しのようなものだったら
アタシだってこうはならなかった
他とは違うことを教えたのは
貴方だったんだから仕方ない

愛されすぎないように
愛していないとバレないように
ひっそりと息をして生きるのも
そろそろ限界だったから

孤独より恐ろしいことは
孤独に慣れることだと
貴方以外から学んだの
きっと大切なことなんだよ

痛みには慣れるけど
慣れた自分に納得しちゃいけない
そんなことさえ貴方は知らない
知る必要もなかったんだろうけど

確かに愛は愛だとしても
貴方が与えるそれを
本物だと認めてしまえば
アタシの心が壊れるから

忘れないで
アタシが貴方を見放したの
もう要らないとアタシから
その手を放したの

ただその時が来ただけなんだから
貴方は黙って見送るしかない
最後の情が枯渇したの
もう何の感情も残ってないわ



「美しくもない巣立ちだとしても」

『名前を捨てた朝』

『名前を捨てた朝』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-11

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