マクロの決死圏Ⅰ、Ⅱ

マクロの決死圏Ⅰ、Ⅱ

マクロの決死圏Ⅰ

 生物実験の時間だ。
 赤血球がなぜ玉なのか、丸いのかわかるかい
 先生が生徒たちに質問をした。
 そりゃあ、四角くて、サイコロのようだったら、血の中を流れるとき、お互いがぶつかって、弾き飛ばされて、時間通りに目的のところにつかないからでーす。
 生徒の一人はよく考えて答えた。
 いや、俺は心臓の中に入ったとき、心房から心室に入るとき、弁にひっかかるからだとおもう。
 もう一人の生徒がいった。
 運ぶ酸素のかたちに関係があるんじゃないかしら。
 女子生徒が答えた。
 それは賢明な答えだ、酸素の形は知ってるかい。
 気体だから形はありません。
 いやあるんだよ
 わかりません、酸素は丸ですか、三角ですか、四角ですか。
 酸素は記号だとOがふたつだから、つぶれた丸が二つだ、だから酸素は丸、それを中にいれて運ぶ赤血球は四角だ。宅急便はみな四角い箱だろう。
 先生はそう説明した。
 だけど顕微鏡で見ると、赤血球は丸だと教科書にかいてありました。
 実は血球はだらしがない、水の中で四角になっているというのは大変なことなのだよ、川の中の石をみたことがあるだろう。角のあった石が下流に行くほど丸くなっていくんだ。石だって四角でいたいのだが、水がゆるしてくれないんだ。角がとれ、つるつるになれ、そういわれて、角を自分の体の中に入れ、でこぼこしていたところを内側におりたたんで、丸くなり、表面はつるつるとなる。
 そんな風に先生は説明した。
 赤血球も本当はそうなのですか、
 そうだ、おなじなんだよ、赤血球は血液流され、角が中にくぼんで、丸く見えるのだ。本当は四角でいたいのだ。肺で酸素を取り込むときには、赤血球は四角くなるのだが、すぐ血液に転がされ丸くなる。
 肺で四角い赤血球は丸くなるのですか。
 そうじゃ、酸素をはなすと、すぐ四角になるのだが、酸素がはいると、一瞬に丸くなる
 赤血球は球じゃなくて、円盤なのはどうしてですか。
 水に圧迫されて、真ん中がへこんだだけだ。
 強い血球は四角いわけですか
 そうだよ、たまに四角いのがいることがある。
 そんなのいますか
 みんなでさがしにいくか。
 むかし、ミクロの決死圏という映画があった。重要人物の脳手術のため、小さくなった人間が注射器で血管にいれられ、病変した場所行きそれを切り取るのだが、血液の中で抗体におそわれたり、大変な思いをする。時間がくると元の大きさになってしまうので、どこからそとにでるか、もしでられなければ、患者は破裂してしまう。最後は涙の一滴の中に入って外にでるという、なかなか体の中のことを理解した、映像的にもきれいな映画だった。
 それじゃあ、四角い赤血球を探すため、われわれが小さくなって、だれかのからだにはいるんですか
 そうだな、だけど、小さくなるのではなく、中に入る人間を大きくする。
 そんな機械ができたんですか
 うん、機械じゃなくて薬だ。人間が体育館ほどのおおきさになる。だから、穴からはいればいいんだ。鼻の穴、耳の穴、口、尻の穴、どこから入ると一番早く四角い赤血球にあえると思うかい。
はい、空気を入れる鼻の穴だと思います。
口の穴からも入るからかな
など生徒は答えた。先生は、
会えるかどうかはうんである、うんがよくないと、ということは、尻の穴がいいかもしれん
 どうして、そんな薬をつくったんですか
 家畜を大きくするためだ。
 どうしてですか、
 牛を体育館ほどにしてみなさい、どれだけの人がステーキを食べられるか
 たしかに食糧難が解決します
 そんな薬だれがつくったんですか
 わしだよ
 え、先生がつくったんですか、すごい、それで材料はなんですか。
 ふくらし粉。
あの天ぷらに使うやつですか。
 ああ、だが、少し改良した。
 どうしたのですか。
 飲むと血液にはいり、細胞にはいって、すべての細胞が膨らむのだよ、だけど、膨らむときに、細胞の中のものが汚れるので、汚れ落としが必要だ。
 なんですか。
 練り歯磨きをつかったのさ、歯の汚れをおとすやつだ。そいつを膨らし粉に混ぜた。
 それを食べればいいのですか
 いや、膨らし粉と練り歯磨きをいれた生理食塩水を注射するんだ。すると、赤血球の酸素と結びついて細胞の中にはいる、まず、汚れた細胞の中のものを歯磨き粉がみがいてくれる、そのあと、膨らし粉が酸素から離れると、細胞の中にあるものをすべて膨らます、それで細胞が百倍になる。
 細胞の大きさはどのくらいになるのですか
 細胞のおおきさは10ミクロンだからその百倍だ。
 それじゃ、1ミリにしかなりませんね。
 君は、計算できるんだな。
 そこが問題だ。ビルの大きさにするには、一回の注射じゃならない。膨らし粉を何回も注射していけばいいのだが、そこで、強力な膨らし粉をつくり、一度の注射でビルの大きさにする。
 それじゃ、膨らし粉の改良とはそういうことなんですね。
 そうじゃ、実験検証をしてみよう。
 膨らし粉と強力粉を買ってきてくれ、それに強力粉もだ。
 強力粉もですか、はい、買ってきました。
 膨らし粉と強力粉を混ぜれば、効果はなん万倍にもなる。
 練り歯磨きもほしい
 はい、買ってきました。
 膨らし粉と練り歯磨きで練るとできあがりだ。
 だけど、膨らし粉は油で炒めないとふくらまないのではないですか
 よくきがついた。熱を加えればいいので、これを注射した後に、サウナにでも入る。
 そんなんで効くんですか、
 わしが自分に注射して大きくなるから、みんなが体の中に入って、四角い赤血球をさがしなさい。
 はい
 先生が膨らし粉と強力粉、それに歯磨きを注射器に入れ、自分のわき腹にぶすっとさした。
 痛そう。先生はがまんをした。
 大丈夫だ。夜寝ているときに、わしの細胞には膨らし粉がはいり、朝起きたら、サウナにはいると、わしは大きくなるのだ。
 だけど、先生が家のサウナにはいって、そこでビルみたいに大きくなったら、家が壊れちまいませんか
 そうか、よくきがついた、サウナはやめよう、朝起きたら、浜辺にいって、砂浜の上で、朝日を浴びよう、それでわしは巨人だ、そうしたら私の体にはいりなさい。
 先生、もとにもどらないのですか。
 あ、いい忘れたな、大きくなって一日たてば萎びてもとにもどる。ということは、明後日の朝にはもとにもどる。
 先生、お尻の穴はよく洗っておいてください。
 ああ、そうする。
 入ったら、僕たちは先生の血の中を泳ぐのですか、おぼれたらどうなるでしょう
 ああ、大丈夫、毛細血管でも君たちの背の高さくらいだろう、空気を吸いたくなったら、血管の壁をちょっと開いて、外に顔を出しなさい。
 はい、それでは、海水着をきて先生の穴からはいります。
 それでは明日浜辺に集合。
 生徒たちは家に帰って行った。
 先生は自分の家に寝に帰った。

 明くる朝、海水着を身につけて、生徒たちが浜辺にあつまった。
 先生がパジャマを着て砂浜の上で寝ている。
 まだ膨らんでいない。
 お日様は海の水平線より少しあがったところだ。
 生徒の一人が、太陽が真上にきた時じゃないと、焼けないんじゃないかといった。
 そうだったな、そいじゃ、一度帰って、お昼前にあつまろうよ
 ということで、みんな家に戻った。
 さて、真夏の太陽はじりじりと、家の屋根をこがし、砂浜は裸足では暑くて歩けないほどになってきた。
 生徒たちは、先生がビルほどにも膨らんでいることを期待してまた集まった。
 ところが、先生はそのままそこにいた。
 先生どうしたんだろう、膨らんでいない。
 先生は目を閉じて、じっとして膨らむのをまっている。
 あら、ほらふくらみ始めたわよ
 女性とが先生の足の間を見て言った。
 先生のパジャマズボンの前のボタンがはじけると、中のものが大きくなって、外に飛び出してきた。
 やだあ、こんなの見たくない
 女子生徒は目を覆った。
 朝立ちにしちゃ、遅いなあ
 ませた男の生徒がつぶやいた。
 股間のものは大きくなって、50センチほどになった。
 膨らし粉と強力粉と練り歯磨きは、そこしか大きくしなかったようだ。
 大きくなった先っぽにトンボがとまった。
 そのとたん、ぶるぶるっとふるえて、先から水が放出された。
 そのあと萎びてしまった。
 トンボの羽がべたべたになって、トンボはあわてて、海水で洗った。
 生徒たちは体も大きくなるのではと見ていたが、やがて日に焼けて焦げてしまった。
 膨らし粉の実験は失敗だな。
 生徒たちはそういって、家にもどってしまった。
 え、先生がどうなったかって、
 波がさらって、どこかにもっていっちまった、歯鯨にでも食われたんだろう。

24ー2ー21
 


マクロの決死圏Ⅱ


 「赤血玉がどこから生まれるか知っているかい」
 先生が生徒たちに質問をした。小学校六年生の授業だ。
 「心臓です」」
 一人の男の子が考えて答えた。
 「それは血液をからだに送る臓器だよ」
 女の子が答えた。
 「子宮です」
 子供を作ると教わったのだが、まちがえたのだ。。
 「おしりです」
 「どうしておしりなんだい」
 「血をつくるの、ぞうけつ、ってききました」 
 「赤血球は骨髄でつくられます」
 「肉屋さんで売ってます」
 牛の骨髄を焼いて食べたことがある女の子がそういった。それはまちがいではない。
 「骨髄というのは骨のなかにあるんだよ」
 指を触って「このなかでつくられるんだ」と一人の男の生徒がおどろいた。
 「大人になると、どの骨でも作られるわけじゃない、背骨、胸の骨、頭の骨、それに骨盤の骨髄が働いているんだ」
 先生がそう言うと一人の女の子が手を挙げた。
 「見てみないとわかりません」
 自称発明家の先生、はたと考えた。
 「むかし、ミクロの決死圏という映画があった。偉い人の脳手術のため、小さくなった人間が注射器で血管にいれられ、脳の病気のところにいって、それを切り取るんだ、血液の中で、小さくなった人間は抗体におそわれて大変な思いをする。時間がくると元の大きさになってしまうので、それまでに手術を終わらせて、外にでなければならない」
 「でられないと、その患者さんはどうなるのですか」
 「人の体の中で小さな人がもとに戻ったら、その人は破裂してしまうね」
 「どうなったのです」
 「最後は涙の一滴の中に入って外にでるという、危機一髪のおもしろい映画だったよ」
 「それじゃあ、僕が小さくなって、だれかのからだにはいって調べます」
 一人の男の子がいうと、みんなも行きたいと手を挙げた。
 「そうだな、だけど、人間を小さくするのむずかしいな、人間を大きくすることなら、先生に考えがある、そうすれば、みんなはそのままで、その人に入れる」
 「大きくする機械があるのですか」
 「機械じゃなくて薬ならつくれるよ、人間が体育館ほどの大きさになれば、君たちが血管に入りやすいだろう」
 「どうやって大きくなるのですか」
 「家畜をお大きくするために、私が考えた薬があるのだ」
 「すごいですね、でもどうして家畜を大きくするのですか」
 「牛を体育館ほどにすると、どれだけの人がステーキをたべられるか、食糧難を克服するためだよ」
 自分がステーキ大好きだったからにすぎないが。
 「先生すごいですね、薬の材料なんですか」
 「ふくらし粉」
 給食のパンがあまり膨らんでいなかったことからふくらし粉で人間をふくらませることを考えたのだ。
 「パンに使うやつですか」
 「そうだよ、少し改良したけどね」
 どうしたのですか
 「練り歯磨きをくわえたのさ、混ぜて練ればいいのだ」
 「それを飲むのですか」
 「ふくらし粉と練り歯磨きを生理食塩水に溶かして注射するんだ、すると、赤血球の酸素と結びついて、細胞にはいる、酸素から離れると、膨らし粉が細胞の中にあるものをすべて膨らまして、歯磨きがそれを磨く、すると大きくなった細胞がいきいきして倍になる、私が注射するから、君たちが中に入って、骨髄をのぞいてごらん」」
 「細胞の大きさはどのくらいですか」
 「10ミクロン」
 「それじゃ、百倍になっても、1ミリじゃないですか」
 「えらいね、君は、計算できるんだな、そこが問題だ。一回の注射じゃならない。膨らし粉を何回も注射していけばいいのだが、そこで、強力な膨らし粉をつくり、一度の注射でビルの大きさにする」
 「私たちは身長が1メーターほどですけど、先生はどのくらいの大きさになると、私たちが血管にはれますか」
 「おお、いいところに気がついた。毛細血管は赤血球が一つか二つ並んで通れるほどだ、だから、毛細血管の太さを1メーター以上にしなければならないな」
 「計算できました」
 算数が特別に得意な男の子が手を挙げた。
 「お、いつもはやいな、それでどのくらいだね」
 「10ミクロンは1メーターの1万ぶんの1です、ですから、1万倍にならなければなりません」
 「おや、こまった、私は身長が2メーターだから、2万メーターの大男にならなければならないのか、あの砂浜だって、数百メートルだ、血管から入るのは無理だな」
 「どうやったら、血管を通らずにその赤血球を作る骨に行くことはできますか」
 「うーん、鼻の穴にはいり、鼻の穴のうえのほうにあるにおいを感じる細胞は、神経細胞でもあってな、神経をつたって、脳に行く途中で、頭蓋骨の中にはいる道をさがすのかな」
 「わかりました、鼻の穴にはいります」
 「それなら、十階建てのビルほどになれば、いいわけだ、あの浜辺でも大丈夫だな」
 「あした、みんなが、ふくらし粉と歯磨きをもってくるように」
 その日の授業は終わった。

 次の日、生徒たちが膨らし粉と練り歯磨きを持って学校にきた。
 「さー、授業を始めよう、もってきたものを前の机にもってらっしゃい」
 生徒たちは、膨らし粉と練り歯磨きを先生の机の上に並べた。
 一人の男の子がてをあげた。
 「ふくらし粉はレンジで、ゆっくり暖めないとふくらまないと、お母さんが言ってました」
 「そうだな、熱を加える必要がある、これを注射した後、風呂に入ればいいのだよ」
 「だけど、先生、膨らんだら、先生の家が壊れちゃうでしょ」
 「おお、そうだね、いいことに気がついた、膨らむのに時間がかかりそうだから、学校が終わったら、うちでお風呂にあったまってねるよ、朝になったら、明日砂浜で大きくなるから、あしたのお昼ごろ、みんなは浜辺に集合」 
 そういうと、先生はふくらし粉と歯磨きのはいった注射器を自分のわき腹にぶすっとさした。いたそう。
 「せんせい、どうやって、元に戻すのですか」
 「膨らし粉で膨らんだパンは、冷えればもとにもどるから大丈夫だよ」
 それで授業が終わった。

 明くる日の昼に、、生徒が浜辺に集まった。
 大きな裸の先生が浜辺で上向きになって寝ていた。十階建てのビルが横に寝ているくらいの大きさだ。
 着ていたものがちぎれて砂浜に散らばっている。
 「先生、洋服着たままふくらし粉飲んだんだ」
 「こうなることはわかっているのにね」
 「予測が下手なんだよ、この先生」
 「それじゃ、鼻の穴からなかにはいるよ」
 生徒たちはぞろぞろと、肩から胸にあがって首を通って顔にのぼった。背の高さほどの鼻の穴があった。みんなは中に入った。
 「なんだい、これ」
 太いぜんまいのようなものがたくさんはえている。
 「鼻毛だろ、きったねえ、ごみがついてる、ほら、鼻くそ踏むなよ」
 生徒たちは鼻の奥にすすんだ。三つのひだの上の赤いところに、腕ほどの太さの毛がたくさん生えている。
 「あれが、臭いの細胞の毛だよ、においを感じる奴だ、あれをかき分け細胞の間に潜り込んで、ちょっといくと、脳の出っ張りがあるはずだよ、嗅球っていうんだ、臭いの神経がある、それに潜り込もう」
 よく勉強をしてきたお医者さんの家の生徒がさしずして、ともかくみんなで、嗅球のなかにはいり、すすんでいった。
 「以外と脳の中は明るいんだね」
 「電気が走っているからだ」
 そうやって脳に入り、脳の上の方から脳膜をかき分け頭のてっちょうに向かった。やっと頭蓋骨にたどり着いた。
 「この固いのどうやってはいる」
 「あまり厚くないようだな、中にはいるのは無理じゃないの」
 「やっぱり、十階建てのビルじゃだめなんだね、もっと大きくならなきゃ」
 「それじゃ、ほかのところにいこう」
 「骨盤はどうだ」
 生徒たちは脳の中に戻ると、脳から体の中に太いケーブルが延びているのに出くわした。
 「これは脳神経だな、脳神経の迷走神経って言うのは、からだの下の方にも行くから、これを伝わっていこう」
 この生徒は脳のお医者さんになるつもりだ。
 「どれがそうなんだい」
 「まようやつだから、ほら、このごちゃごちゃしたやつだろう」
 こうして、迷走神経の束の中に入り込んだ生徒たちは、下へ下へとおりていった。
 ちょっと広いところにでたところで、女の生徒が迷走神経の一つの束につまずいてしまった。
 迷走神経が刺激されて働きはじめた。 ブーンという音が聞こえると、生徒たちはふくらんだ場所に押しこまれ、そこにあった液体と一緒にトンネルの中に押し出された。
 「なんだ、これは、ねばねばしやがって」
 その時、周りが大きく揺れた。
 「地震だ」
 一人の生徒が叫んだ。
 「先生が動いたんだ」
 そのとたん、ねばねばに水がまじって生徒とともに勢いよく流れ、生徒たちは先生の体から、空中にとばされてしまった。
 うわーっと、声をあげて生徒たちは海に落ちた。
 みんなは立ち泳ぎをはじめた。
 魚たちがよってきて、からだについた白いねばねばをつついて食べ始めた。
 生徒たちは海面から顔を出して浜辺の先生を見た。
 巨人になった先生の二本の足の間から、煙突のようなものが起立して、ひくひく動いている。先から白い液体がもれている。あそこから飛び出したんだ。
 煙突はだんだん萎びて、足と足の間に倒れてしまった。
 生徒たちは浜辺に泳ぎ着いた。
 「あれなんだ」
 「見に行こう」
 生徒たちはたちあがると、先生の足によじ登った。
 「煙突がしわが寄ったなすびになっちゃった」
 「赤血球ができるところをみることができなかったわね」
 「しょうがないよ、でも出てこられてよかった」
 「あの煙突なにするものかしら」
 ふっと、一人の男の子が、自分の足の間にあるものが大きくなってきて気になった。
 煙突はこれかもしれないと思ったが、はずかしいので言わなかった。
 しばらくすると、ビルほどの大きさだった先生が元のおおきさに戻った。だが、ねむったままだ。
 真っ裸の先生が砂浜に横たわっている。
 日が翳って、雲がわいてきた。風が吹いてきた。
 今日の授業は終わりだな、生徒たちは家に帰っていった。
 先生は波にさらわれて、海に流され、歯鯨に食われちまった。

マクロの決死圏Ⅰ、Ⅱ

マクロの決死圏Ⅰ、Ⅱ

先生が生徒に身体を大きくする実験をさせる。その2つの話。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • SF
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2025-05-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted