救済の暴力性

自分のことすらままならないのに
俺は人を支えることなどできるのだろうか
救われた経験のない人間が
人を救うことなどできるのだろうか
人を救うことで
己の被救済欲を満たそうとしていはしないか
人を救う、そんな抽象的な概念に
いつまで俺はかかずらっているのだろう
いつまで俺は己自身と和解できずにいるのだろう
救済欲なんて七面倒臭いものをかかえて
俺は一体何になろうとしているのだろう
救済欲は被庇護欲の裏返しか
俺は誰かを護ることで
護られたいと救難信号を出しているのか
そんな邪な人間が護られていいはずがない
見返りを求めるなら救うなんてしない方がいい
救う、それは利己的な行為だ
頼まれてもいないのに救えばそれは暴力だ
頼まれていても気に召さない救い方であればそれも暴力だ
救うという行為は一歩間違えれば暴力性を孕んでいる
俺はそんな暴力性を孕んだ行為を
ほんとうにしたいと思うのか
ほんとうにされたいと思うのか
俺は一体
何を目指しているのだろうか

救済の暴力性

救済の暴力性

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-08

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