猫が液体になった日
猫はほぼ液体という話を聞いたことはあるだろうか。
もし、明日猫が液体になっていたら?
私はそんな場面に直面していた。
「ナミ、いないのー?」
猫の名前はナミ。よく人名と間違われる。
名前を呼んでいるのはナミの姿が見当たらないからだ。
どこを探してもいない。
部屋どころか、テレビの裏やトイレ、ベランダも探したけれど……。
まさか、ベランダの下に落ちていたり!?
と思って心臓が凍ったりもしたが、1階を探してもいない。
外を探すのを諦めて、家に帰るといつも通り「ニャー」という声がした。
良かった。家にいる。音はリビングのほうから聞こえたから急いで向かう。
「ニャー」
「えっ…。」
まさかの、ナミはいなくて。
液体から猫の声が聞こえる。えっ冗談でしょ?
するとナミはそれを笑うかのように「ニャー」と鳴いた。
茶化してくるところはいつも通りなのだが…。
「そうだ。病院に連れて行かないと。」
ただ液体だったからうまくつかめない。
その横で、外出用のケージだけが寂しく開いている状態だ。
病院に急いで電話をかけてみた。
「猫が液体になってしまったのですが…。」
「猫は液体になりませんよ。」
「でも、いなくて。」
「見つけてからお越しください。」
「けど水から猫の声が…。」
「電話するならテレビ局のほうがよくないですかね。猫の声が聞こえる液体があるのならですけど…。」
「信じてください。」
「まあ病院に連れってきてもらったら診察します。」
病院に連れていき、液体を見せた時には、困惑されたが検索してくれた。
結果は「猫のふれた水」となった。無念。
諦めて帰ろうとした時、「ニャー」と声がして、疲れたわたしはほらと顔を明るくしながら、獣医に指さした。
「不思議なこともあるもあるものですね。」
家に連れて帰ってきた。
納得はいかないが、元気に鳴いているので水になったと割りきって、水をツンツンしている。
「私の猫好き度やばいかも。水までツンツンしだすなんて。」
水をツンツンしていると、ふと眠気が襲ってきた。
「ニャー。」
気が付くとナミがおなかの上に乗っていた。
すっかり寝落ちしたようだ。さっきのは夢だったのだろうか。
ただ後日、買い物中にこの前の獣医に出会ったとき
「不思議な水でしたね。あの後どうなりました?」
「元に戻りました。」
「よかったです。」
そして元気?になった後に撮った写真を見せた。
「かわいい。アメリカンショートヘアでしたか。」
かわいいと声を出すとは、この人も相当猫好きかも…。
水をツンツンしていた私も人の事を言えないが。
元に戻ったからではあるが、あの時写真を撮っておけばよかったと後悔した。
あの時は、気が動転していて、それどころではなかったのだ。
さあ、猫が待ってるウチヘ帰ろう。
猫が液体になった日